田村淳、著書『母ちゃんのフラフープ』で振り返る 母の死からの一年
思い出を振り返りながら、俺ってどういう人間なんだろう、母ちゃんにこんなところで影響を受けてるな、といったことをポジティブに振り返ることができた。
■MC力の根源にあるもの
番組の運営以外にも、様々なプロジェクトに活きているように見えるMC力。「整理してつなげる、深掘るという」という判断・行動はつながっているのだという。
最初は興味がなかったという司会業だが、これも振り返ってみると、団地の井戸端会議の中心で会話を仕切り、笑いを取っていた母・久仁子さんという原体験がある。
淳が司会をする際にテーマに掲げているのは、「譲歩・寛容・博愛」。さらに、自分だけが気づいたその人の面白さや行動にスポットライトを当てる「一隅を照らす」という考え方。
「自分の番組で、普段いじられない部分をいじられた人が、多くの人に面白がってもらえて、他の番組に出たときにもそういういじり方が定着する。こんな流れを見ると僕が司会をやってよかったな、と思う瞬間」と淳は語る。
司会業の楽しみ方、成果をどのように得るかという感覚がようやくわかってきたところだという。
■平時にも死を意識するために
本書の末尾では、闘病中の久仁子さんがフラフープを回す動画へのリンクも掲載されている。出版後は、尊厳死関連の団体や葬儀会社などからのアプローチも増えてきたという。
修士論文の資料として様々な人に遺書を書いてもらった結果、「遺書にネガティブな印象を持っていたが書いてみたらポジティブなものだった」と答えた人が多かった一方で、「自分では書くタイミングがわからない」といった声も。
「死はタブー視されているけれど、生きている間にコミュニケーションを密にとったほうがお互いに憂いがない。できるだけ心残りを少なくしましょう、というのがサービスの軸となる部分」と語る淳の次の課題は、死がまだ身近でない平時に遺書を意識してもらうこと。 これは、次の研究課題となる。
■インタビューを終えて
新型コロナウイルスは、命や死との向き合い方、家族の絆、仕事やプライベートな時間の使い方など、私たちの暮らしや考え方に大きな影響を与えた。
本書が必要とされるのは、そんな今だからこそ、なおさらかもしれない。そして、感動だけでなく、社会・心理学的な学びや、ビジネスのヒントなど、読み手に応じてさまざまな答えを手に入れることができるだろう。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト)