「あの五輪プレーブックでは不十分」 シンガポール選手団も独自の新型コロナ対策

安全安心な東京五輪の開催などあり得ないと、派遣団について独自の新型コロナ対策を打ち出す国が増えている。

2021/07/08 17:20

オリンピック・五輪

オーストラリアの五輪代表選手団が、最新版「プレーブック(規定集)」の規定を守らない人が多く、最も怖いのは新型コロナウイルスが選手村にはびこることだとして、より厳しい対策を打ち出し話題になっている。

同じように「あのプレーブックでは不十分だ」としているのがシンガポールの選手団だ。高い公衆衛生の意識、国を挙げての優れた感染症対策がかねてから評価されている国々はやはり違う。

シンガポールのメディア『Channel News Asia』『The Straits Times』などが伝え、注目が集まっている。


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■プレーブックに不信感

プレーブックが定めた内容より、ずっと厳しい新型コロナウイルス対策を講じたオーストラリアの五輪代表選手団。選手村の食堂を利用する際は滞在時間を短くし、テイクアウトしたものを屋外で食べるなどの工夫も必要になるという。

シンガポールの選手団も同様だ。数日前、代表のベン・タン氏がメディアに向けて「世界規模で再び新型コロナの流行拡大が確認されている今、あのプレーブックでは不十分。独自の新型コロナ対策を講じ、誰もがそれを徹底する」と発表した。

日本に向かう全員の健康と安全を守り、帰国の際にも新型コロナウイルスを持ち込ませないことに、最大の努力を払うとしている。

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■対策は真剣そのもの

シンガポールから帯同する医師団を代表して、テオ・チン・シム氏が「日本に向かう選手団と関係者の全員がワクチン接種を完了した」と発表。

現地ではアスリート同士は最低でも2m以上、一般人とは1m以上の間隔をとることを徹底し、食事、飲酒、トレーニング、競技、睡眠時以外は常にフェイスマスクを着用する。

また、渡航・移動・生活で使われるグッズ類のほとんど、衣類、フェイスシールド、マスクは、専用の強力な抗菌加工のものが配布されているという。

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■懸念材料は増えるばかり

ワクチン接種は義務づけられておらず、18歳未満の選手も大勢いることから、接種を受けずに参加する者も当然いる。

さらに、空港のウイルス検査は感度の低い抗原検査で、特例で入国後の14日間隔離措置も免除される。ところがデルタ株ではせっかく打ったワクチンも、予防効果がぐんと下がるという。

こうした事実に加え、「選手村の職員を含む12人のスタッフが新型コロナに感染した」「バスの運転手についてワクチン接種が間に合わない」という日本側の報道も、世界に衝撃を与えてしまっている。


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■外国人でにぎわう豊洲

そんな中、東京に緊急事態宣言が出されようが、プレーブックが配布されようが、選手や関係者とみられる外国人が豊洲の街に繰り出す様子まで報じられるようになった。「ワクチンだって打ってきた。他の人が外出しているなら自分も」といった心理も働くのだろう。

オーストラリアやシンガポールの選手団による真剣そのものの新型コロナウイルス対策は、「安全安心な東京五輪・パラリンピックの開催などあり得ない、主催者の『お願いごと』など誰もロクに守らない」という判断の上にある。このことを、IOCも日本政府もしっかりと受け止めるべきだろう。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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