カナダ紙のウェブ投票で7割が「五輪は中止を」 スポーツ愛好国でも開催に不安
世界のワクチン接種率はまだ低い。スポーツ好きが多く、接種が順調なカナダからも「中止か延期を」の声が…。
カナダの日刊紙としては最大部数を誇る『トロント・スター』。5日、人気のコーナー『土曜討論(The Saturday Debate)』のテーマは、東京五輪は中止すべきか否かだった。ウェブ投票も行われたが、開催に強い不安を覚えるのは日本人だけではなかったようだ。
■投票者の7割が「中止を」
同紙の5日の『土曜討論(The Saturday Debate)』では、東京五輪が開催に向けて突き進むことの是非を問い、著名人2名の意見が紹介され、続いて読者がウェブ投票に参加した。
10日午前10時の時点で投票者数は330人。「東京五輪は中止すべき」が73.6%(243票)、「中止すべきではない」が19.7%(65票)、「わからない」が6.6%(22票)だった。スポーツを愛する人が多く、ワクチン接種が順調なカナダでも、7割強が中止すべきだと感じているようだ。
■「選手団にも大きな負担」
カナダ陸上競技・女子800メートルのマデリーン・ケリー選手は、「複数の国が新型コロナウイルスの変異株に苦しんでおり、五輪の開催は危険」「アスリートは誰もが五輪を夢見て頑張ってきたが、この状況で開催を望むのは自己中心的」と主張。
また新型コロナウイルスで闘病するのも自己責任という同意書に署名させられるなど、開催は参加者にも強い負担を強いていると批判した。
一方、トロント大学ビジネススクールの教授で、カナダ五輪委員会メンバーのリチャード・パワーズ教授は異なる意見の持ち主だ。「1年の延期で、安全に開催する方法をじっくりと模索できた。アスリートも8割以上がワクチン接種を受けるだろう」と述べている。
■「どの状況でもうまく対処を」
日本の政府分科会・尾身茂会長が「パンデミックの所で(五輪を)やるのは普通ではない」と発言した一方で、「テスト大会だって成功している。どんな状況でもうまく対処し、安全な五輪の開催を考えればよい」と主張するパワーズ教授。あくまでも五輪が最優先といった印象だ。
新型コロナウイルスのせいで、世界は一変した。ウイルスの終息にはまだまだ時間がかかり、「そのうちに次の危険なウイルスが現れ、また人々を苦しめるだろう」と語る専門家たち。今後、数十万人がいっきに集う超ビッグイベントの開催は、どれも難しいだろうとの声もあがっている。
■「世界にワクチンが行き渡ってから」
ケリー選手とパワーズ教授の主張に続き、ほぼ全てが開催中止・延期派からではあるが、コメント欄も大いに沸いた。
注目されたのは「いくつもの大会が戦争で中止になった。コロナによる世界的なパンデミックも同様の脅威だ」「インド型変異株が猛威を振るい、ワクチン接種が行き届かない国の人々と接し、それぞれがウイルスを母国に持ち帰ることを考えれば、五輪は究極のスーパースプレッダー・イベントになる可能性がある」といったコメントだ。
ほかにも「コロナ禍でこれだけの犠牲者が出ているのに、まだ祭典を祝おうなどと言う気か」「延期するべき。すべては世界中の人々がワクチン接種を終えてからだ」といったコメントに、多くの同意が集まっている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)