走行中の列車の窓から顔を出し死亡 責任の所在でもめた裁判がようやく決着
女性は「走行中の列車から窓から手や顔を出さない」という車内の警告文を、無視してしまった。
イギリス・ブリストルの近郊で2年半ほど前、若い女性が走行中の列車の窓から顔を出し、木の枝に衝突して死亡する事故が発生。遺族は鉄道会社に全面的に責任があるとして、高額の損害賠償を求め裁判を起こしていた。
だが、彼らの想像した通りに物事は進まなかったようだ。イギリスのメディア『Wales Online』『The Independent』などが、注目の裁判の話題を報じている。
■列車の時速は120km
事故は2018年12月1日、ロンドンから西に進んだブリストルとバースの間を走る、グレート・ウェスタン鉄道 (以下GWR)の列車で起きた。
列車が時速120kmで走っていたなか、ビーサン・ローパーさん(当時28歳)は窓から外に顔を出し、冷たい風に当たっていた。ビーサンさんはサウスウェールズに暮らしており、バースで友人と会い、クリスマスショッピングと食事を楽しんだ帰りだった。
■枝が顔に突き刺ささる
ところがトゥワートンという地点を列車が走行中、木の枝に衝突してビーサンさんは死亡。枝が顔に突き刺ささるという悲惨な最期であり、両親はGWRを相手に高額の損害賠償を求める裁判を起こした。
28歳の娘の痛ましい事故、早すぎる死に納得がいかない父親は、線路脇の木の枝を短く切る保線のための下請け業者も含め、GWRの安全管理がずさんだと訴えたという。
■遺族が有利にみえたが…
列車は旧型で、乗客が列車から降りる際にはドアについている窓を下ろして身を乗り出し、外側のノブを手で引いて開けるタイプの車両だった。
2016年にはドアを開ける際に同様の死亡事故が起きており、遺族や調査官は「乗客が身を乗り出すというのに、木の枝を伸び放題にするとは危険極まりない」と非難した。
こうした状況から、ビーサンさんの死の責任の所在をめぐる裁判は、圧倒的に遺族が有利に見えた。ところが、結果としてそうはならなかった。ビーサンさんが大量のアルコールを飲んでいたことがわかり、陪審員たちは「彼女にも過失があり、相殺されるべきだ」としたためだ。
■大量飲酒さえなければ…
ビーサンさんは、バースの駅を発車して間もなくドアを開けていた。次の停車駅からは遠く、つまり降りるためではなく、酔い覚ましに窓から顔を出していた可能性があったのだ。
「走行中の列車から窓から手や顔を出さない」という警告文を無視したその行為は、過失を相殺するうえで、大きなマイナスポイントになった。飲みすぎなければ、こんな悲劇は起きなかったのかもしれない。
一方のGWRおよび保線管理業者は、裁判を経て自分たちの過失部分や改善点を認め、安全な運行に努めたいと約束している。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)