IOC、「コロナ感染の責任は個人に」 五輪憲章への矛盾指摘する声も
日本で新型コロナウイルスに感染する可能性を「ないと保証できない」と発言したIOCに、世間からは…。
先週、2日間にわたる『国際アスリートフォーラム』をオンラインで開催した国際オリンピック委員会IOCと世界各国・地域の選手団代表。
そこで、選手団たちが「新型コロナに感染しても主催者側の責任を問わない」などと記された同意書に署名を求められることが告げられ、波紋を広げている。安全安心どころか、感染の危険を「ある」と認めたIOCに対し、さっそく批判のコメントが沸いている。
■「感染しない保証はない」
先日オンラインで開催された『国際アスリートフォーラム』で、IOCのラナ・ハダッド最高執行責任者は、「大会期間中に新型コロナウイルスに感染しても主催者の責任を問わない」なる内容を含む同意書が用意され、参加者が署名して提出することを説明した。
五輪ほか、スポーツの主要な大会でそうした誓約書や同意書のやり取りがあるのは慣例だといい、「今回はそこに新型コロナに関する事項が加わった。感染しないと誰も保証できない。そのリスクは全員が負っている」とのことだった。
■ジカ熱騒ぎのリオ五輪では…
懸念材料が特にないなかで開催される五輪とは、条件がまるで異なる今回の東京五輪。
そこで主催者が「こちらに一切責任はありませんから」と言ってのけるのは、無責任すぎる。2016年のリオ五輪は、ジカ熱の流行にも負けず成功したと主張する人もいるが、空気感染することや致死率の点で、新型コロナウイルスとジカ熱は比較になるまい。
この話題は、アメリカのスポーツ専門チャンネル『ESPN』、やはりアメリカの『ワシントン・ポスト』、インドの『インディアTV』、『Yahoo!News フィリピン』ほか多数の海外メディアが、さっそく批判を込めて伝えている。
■無視できない保険の問題
スポーツの海外遠征に、保険の加入は欠かせない。
しかし、渡航中止勧告を無視して来日することになりそうなアメリカの選手団については、「加入する保険の料率も変わるのでは」「日本で新型コロナに感染しても行動歴など免責部分の調査に時間がかかり、保険金がスムーズに支払われないのでは」といった懸念の声があがっていた。
主催者が安全を保障できないと言うようでは、他の国でも保険会社があわてて保険料や支払い条件の見直しを行う可能性がありそうだ。
■開催強行への批判がずらり
日本の総合情報を英語で伝え、五輪情報にも力を入れているウェブサイト『Japan Today』では、この話題に80を超えるコメントが寄せられた。保険についての疑問のほか、こんな声にたくさんの「いいね」が付いている。
「五輪のスピリットは、“Spirit”ならぬ“$pirit”。二度と観たくない」「ピエロ・ナンバー1:恥辱の嘘つき、アベ。ナンバー2:日本政府の無能なリーダー。ナンバー 3:お金の亡者 IOC」「五輪参加者は特別扱い。空港到着後、プライバシーの侵害を理由にGPS追跡アプリも使用されない」「安全安心を約束するんじゃなかったの? オリンピック憲章にもアスリートの安全を守るとある。その義務を果たせない主催者は訴えられるべきだ」といった声だ。
■日本人こそ避けられている
そのオンライン・フォーラムでは、東京や札幌を含め、日本の多くの都市が7月下旬にも緊急事態宣言下にあるかもしれないこと、日本人のワクチン接種率が5%にも満たないことへの不安について、「一般の日本人と接触する機会は、ほとんどないですから」と説明された。
立場が変われば見方も変わる。日本の国民が東京五輪で危険要素がたっぷりと流れ込むと恐れている一方、海外には、日本人こそが新型コロナウイルスの感染源だと考えている人も少なくないようだ。開催国の国民も参加者も不安でたまらない東京五輪の開催。
これのどこが「平和の祭典」なのだろうか。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)