食品のアナフィラキシーショックで脳障害 救急隊員の勉強不足で高額賠償金が発生

判事はその法廷で、救急医療に携わる隊員たちの勉強不足や不手際を次々と断罪した。

2021/04/18 14:30

救命士・救急隊・患者
(vichie81/iStock/Getty Images Plus/画像はイメージです)

何かをほんの一口食べただけで起きてしまう、最も恐ろしいアレルギー反応のアナフィラキシーショック。速やかにアドレナリン投与などの治療を受ける必要があるが、駆けつけた救急隊員の対応が不十分だったことから、アメリカのある女性は重度の身体障害を負ってしまった。

『NEW YORK POST』『Las Vegas Review-Journal』などが、その民事裁判の結果について伝えている。


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■女性にはピーナッツアレルギー

2013年2月、当時27歳だったシャンテル・ジアカロンさんは、ネバダ州ラスベガスのマンダレイ・ベイ・コンベンションセンターで開催された見本市のイベントに、モデルとして参加した。

その際、アレルギーがありながら成分にピーナッツが含まれていることを知らず、友人が買ってきたプレッツェルを一口食べてしまった。するとアナフィラキシーショックを起こして倒れ、ただちに救急車が呼ばれる事態になった。

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■手当てが遅れ重度の障害

現場に駆けつけたのは、民間の救急搬送サービスとしてネバダ州南部地区保健局から認可を受けている、「メディックウエスト・アンビュランス」社の救急車と隊員だった。

彼らの手当がもたつき、シャンテルさんは後遺症として重度の脳障害を発症。日常生活のすべてにおいて、今なお全面的な介助が必要だ。

両親は「あのとき速やかに適切な手当てがなされていたら、娘は健康を取り戻し、歩み出したばかりの女優の道で、今も頑張っていたはずだ」と主張。メディックウエスト・アンビュランスを相手に、損害賠償を求める民事訴訟を起こしていた。

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■筋肉注射のみ用意

裁判が先月から始まったが、法廷では、アナフィラキシーショックに関する隊員らの勉強不足が明らかになった。食べ物への強いアレルギー反応が疑われると告げられていたため、隊員2名は「エピペン」と呼ばれるアドレナリンの筋肉注射を準備して現場に向かった。

だが、シャンテルさんはすでに心停止の状態に近く、確保した静脈路からのアドレナリン投与が必要な状況だった。法律に従い、ネバダ州南部地区保健局はすべての救急医療機関にその準備を求めていた。ところが隊員らは、経静脈投与用のアドレナリンを持ってこなかったという。


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■高額の賠償金支払いを命令

法廷で判事は、救急医療に携わる者としてあるまじき不手際だと批判。シャンテルさんの家族に2,950万ドル(日本円で約32億円)を支払うようメディックウエスト・アンビュランス社に命じ、閉廷となった。

24時間体制でシャンテルさんの世話を続けてきた両親は、メディアの取材に「救急医療に携わる人たちは、この一件をきっかけに、アナフィラキシーショックへの正しい対応を改めて認識してほしい」と話している。

なお、シャンテルさんが過ごしやすくなるよう、支払われたお金は自宅の新築費用に充てる予定だという。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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