「東京五輪は絶対やる」IOCの強気発言 相次ぐ危険視記事を牽制か
兆単位の東京五輪放映権料やCM収入を前に、IOCは意地でも「中止」とは言わない。
国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長が、このほどビデオメッセージで「東京五輪は必ず開催」「安全な大会になる」などと発言したことが話題になっている。
海外のメディアが「開催は危険。現実を直視せよ」といった記事を書く度に反応するIOC。そこに、開催する東京や日本を心配する気持ちはあるのだろうか。
■頼みの綱はワクチン
欧米の複数のメディアは、数ヶ月も前から度々「五輪の開催はクラスター発生を伴うだろうが、医療体制のひっ迫や崩壊を覚悟したうえで開催するのか」と疑問を呈していた。
なかでも「五輪の開催は危険、無理は禁物だ」と厳しい記事を書き続けてきたのが、イギリスの新聞『ガーディアン』だ。
イギリスでは昨年12月からワクチン接種が始まり、国民の半数弱が接種を終えた今は感染者数が激減。ワクチン効果を強く実感しているだけに、今月12日付の同紙の「ワクチン接種が進まない国で五輪を安全に開催できるわけがない。
ブラジルでは1日あたり4,000人以上の死者が出ており、インドでは125,000人以上の新規感染者が出ている、これが現状だ」といった内容の記事には説得力がある。
■若い世代は血栓症の不安も
またワクチンに関しては、ここにきて血栓症の発症が懸念されるようになっている。
アストラゼネカやジョンソン・エンド・ジョンソンの若い世代へのワクチン接種を見合わせる国も増えているなか、南アフリカ共和国のメディア『SABC』は、接種後の体調不良ばかりか、パフォーマンスの低下を心配する声がアスリートから上がっていることを伝えている。
ワクチン接種については、まだ少し様子を見たい、世界から発信されるさまざまな情報を得たうえで考えたいとする、慎重派のアスリートが多いようだ。
■池江選手の五輪内定に沸くも…
白血病を克服した水泳の池江璃花子選手の五輪内定報道に、おおいに沸いた日本。彼女が泳ぐ日には高い視聴率を記録することだろう。そんな池江選手のみならず、全選手を新型コロナウイルスに感染させてはならない。
中国広州医科大学の研究者らは、がん患者やがんサバイバーは新型コロナウイルスへの感染や重症化のリスクが高いことを、『ランセット』グループのがんに特化した『The Lancet Oncology』誌に発表していた。
長期にわたる治療を経て、免疫抑制状態が起こりやすいためだという。ワクチンによりパフォーマンスが低下するという不安から、接種をためらう選手も多いのであれば、なおさら心配だ。
■選手村近辺に新しい動きか
そんな中で『カナダ放送協会/CBC』は今月11日、「東京五輪では、新型コロナウイルスに感染した選手らを隔離するため、選手村に近いホテルの300室を確保するよう努力している、との情報を日本の大手メディアが伝えた」と報じた。
水面下にある、その危機感こそが現実だろう。コーツ氏は「パンデミックに人類が打ち勝ったことを示す大会にしたい」などとも主張しているが、現実が見えていない様子には呆れるばかり。兆単位ともいわれる五輪放映権料やCM収入に、目がくらんでしまったか。
大会の開催まで100日を切った今、海外主要メディアに「大丈夫、頑張れニッポン!」といった記事を探すことは、ますます困難になっている。
・合わせて読みたい→モト冬樹、池江璃花子選手の内定に言及 「無理やりでも五輪をやってあげたい」
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)