月経のたびに目から出血 20代女性が極めて珍しい「ヘモラクリア」と診断
耐え難い痛みを伴い、子宮内膜組織が確認されるのであれば、それは子宮内膜症の扱いになるという。
「血の涙」を流す人々の話題を聞いたことがあるだろうか。稀に海外からニュースが飛び込み、その都度フェイクニュースかと騒がれるが、じつは「ヘモラクリア(Haemolacria)」という診断名もある。
インドの20代女性について、珍しい症例を『Mirror』『Oddity Central』などが報じた。
■月経で目から血の涙
インドのパンジャーブ州およびハリヤーナー州にまたがる州都チャンディーガル。
ここの医科大学院「ポストグラデュエイト・インスティチュート・オブ・メディカル・エデュケーション・アンド・リサーチ(Postgraduate Institute of Medical Education and Research)」のソウミトラ・ゴーシュ(SoumitraGhosh)博士が、ある女性(25)の極めて稀な症例を報告した。
月経の際、目から赤い涙が流れるとして受診したその女性。検査により血液凝固の異常や涙腺の異常などは否定され、過密な血管網が形成されたことによる「ヘモラクリア」と診断された。
■代償月経型のヘモラクリア
さらに、「世界でも報告が極めて少ない、代償月経型のヘモラクリアだ」と論じるゴーシュ博士。代償月経とは、子宮以外からの周期的な出血があること。
その約3割は鼻出血で、鼻粘膜の一部が女性ホルモンの卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)に反応し、血管に充血やうっ血が生じて出血してしまう。
この女性は検査の結果、眼瞼および眼窩組織の一部にエストロゲンおよびプロゲステロンへの反応性が見られた。代償月経はほかにも胃、腸、肺、乳腺、皮膚、へそ、唇、歯茎、耳、眼瞼などで報告されているという。
■混合型の経口避妊薬で治療
ゴーシュ博士は、女性にエストロゲン・プロゲステロン混合型の経口避妊薬を、3ヶ月にわたり服用してもらった。すると効果が確認されたという。
ただし、そうした薬は嘔吐、頭痛、抑うつ、睡眠障害などの原因でもあり、長年にわたり常用するとなると様々な問題も。深部静脈内血栓が生じるリスク、服用年数や本人の年齢によっては子宮頸がん、胆石、心臓発作のリスクも視野に入れ、各種の検査を定期的に受ける必要があるそうだ。
■子宮内膜症との違い
月経困難症のひとつである子宮内膜症。骨盤内や卵巣に生じることが多いが、ときには膀胱、へそ、肺、直腸や横隔膜など、本来あり得ない場所で子宮内膜組織が増殖し、月経の度にそこで出血が起きてしまう。
この女性の場合も、もしも強い痛みを伴い子宮内膜組織が確認されれば、ヘモラクリアではなく子宮内膜症の扱いになっていたそうだ。悪性ではないが視力に影響し、精神面でのショックも強いというヘモラクリア。緑内障が起きるリスクも高いという。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)