笑えない「渡辺直美=五輪ピッグ」発想 海外はすでにボディ・ポジティブの時代
体質が原因であることが、とても多い肥満や痩せすぎ。それを他人がとやかく言う、まして全世界に発信するのは、いかがなものか。
開会式まであと4ヶ月と少し。そんな東京五輪・パラリンピックで、再び「差別」の話題が浮上してしまった。開閉会式の責任者だった電通出身のクリエーティブディレクター、佐々木宏氏がタレントの渡辺直美のふくよかな体形を使った演出を提案し、不評につき謝罪。
18日に辞意を表明した。世の中は今、痩せている=美しいではない。「ボディ・ポジティブ」という考え方が浸透しつつあることを、佐々木氏は知らないのだろうか。
■却下され「ほっとした」の声
関係者のなかで、五輪開会式の出演候補者である渡辺直美を「どうイジるか」と、演出のアイデアがあれこれ飛び交っていたという。そんななか「Olympig(オリンピッグ)」と描かれたピンク色の衣装を着せ、ブタの耳で登場してもらうというのが、佐々木氏のアイデアだった。
だが、「面白くない」「体型に触れるのは失礼だ」とスタッフの評価はさんざんなものに。正直に批判したスタッフ、それを受け止めて謝罪した佐々木氏。実施されることなくアイデアが却下されたことに、世間からは「ほっとした」という声が多い。
■イメージダウンを招く
ただし、米国の『ウォール・ストリート・ジャーナル』や『ブルームバーグ』などがこの件をすでに報じている。平和の祭典である五輪の開会式で人の外見を揶揄する、それが日本人の国民性だと思われてしまえば、恥ずかしい話だ。
また、渡辺はハリウッドへの進出を視野に入れ、ニューヨーク移住を準備中。佐々木氏のアイデアが通り、それに協力したとすれば、長きにわたり「オリンピッグというブタに扮した女性」というイメージがついて回ることだろう。
■プラスサイズの女性に理解を
フランスの議会は2015年、ファッション業界が不健康なダイエットを続けるガリガリなモデルを起用しないよう求めた。
2017年にはルイ・ヴィトン、グッチ、ディオール、セリーヌなどを傘下に収めるLVMH社が、新たなモデル起用の基準を明確化。BMI値が低すぎるガリガリなモデルを「起用しない」と、明らかにしたのだ。
肥満率が高いイギリスでは、細いマネキン人形を利用していては、売り上げが伸びないことをアパレル業界は痛感しており、パリではプラスサイズ向けの『パルプ・ファション・ウィーク(Pulp Fashion Week)』を開催。自由に、そして健康的に生きる女性たちが、自然な美を世の中に示したと話題になった。
■ボディ・ポジティブの発想を
近年、世界の人々が口にするようになっている『ボディ・ポジティブ』という言葉。「太っている」と同様に、「痩せ過ぎでは?」と言うのも失礼にあたるというの認識のもと、SNSのハッシュタグ「#bopo」や「#bodypositivity」には、連日大変な数の投稿がある。
身長や体形も様々な人々が、思い思いの写真を寄せる。そして、そこには「デブもガリも自身の体質。自分も気にしないし、他人からもとやかく言われる筋合いはない」と、前向きな言葉があれこれと綴られている。
女性の体形をあれこれ揶揄するのは、とんだ時代遅れだ。これを機にボディ・ポジティブの発想、認識が日本でもっと広まることに期待したい。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)