タイガー・ウッズ転院で完治には半年~1年か 重い感染症との闘いになる恐れも
右脚の脛骨と腓骨の上・下の両方の部分に「開放性粉砕骨折」を負ったタイガー・ウッズ選手。傷ついて壊死した組織を除去するほか、今後は追加の手術が繰り返されるだろうという。
SUVが大破する深刻な横転事故を起こしたタイガー・ウッズ選手(45)はその後、ハーバー・UCLAメディカルセンターから、セレブ御用達で有名なロサンゼルスのシーダーズ・サイナイ・メディカルセンターに転院したことがわかった。
最新情報を『CBS News』や『ワシントンポスト』が伝えている。
■「壊死性筋膜炎」への不安
ゴルフ選手としての再起を予想する前に、タイガー・ウッズ選手にはバクテリアによる感染症のリスクが迫っている、そちらを心配するべきだと伝えた『CBS News』。
そこでは、2018年のNFLの試合中にウッズ選手のように右脚の脛骨と腓骨を複雑骨折した、ワシントン・レッドスキンズのアレックス・スミス選手の例が挙げられた。
手術後にバクテリアによる感染症の「壊死性筋膜炎」を発症し、敗血症に至って命の危険にさらされたスミス選手。2020年に復帰したが、最高の医療技術を受けても感染症は手ごわい敵だったと報じられた。
■続く手術と抗生物質投与
骨が皮膚を突き破って外に飛び出し、内部では砕けた骨や破片が肉、血管や神経を傷つける開放性粉砕骨折を負ったウッズ選手。
強力な抗生物質の投与が必要になるが、40年間ニューヨーク市の外科専門病院で重傷患者に手術を行ってきたデヴィッド・L・ヘルフェット医師は、『CBS News』に「感染症のリスクは完治するまで続く。バクテリアが潜んでいて後で発症というケースもあるのです」と説明している。
さらに、骨が安定してきたら両脚の長さや位置に狂いはないか、関節を曲げ、回転させられるか確認が必要になる。「そうした不具合を直すための治療がずっと続く患者もおり、皮膚移植を行う場合もあります」と話している。
■体重をかけられるのは…
一方、元PGAツアーのゴルフ選手で、医科大学の整形外科医であるビル・マロン氏は、「ダウンスイングでは左足に重心を。負傷したのが右脚なのは不幸中の幸いだ。楽観視できる状況であれば、3ヶ月ほどで体重をかけられるのではないか」と語った。
だが、南カリフォルニア在住の整形外科医ジャイム・ヘルナンデス氏は「半年から1年かかるだろう」と予想。両氏とも「実際に患部を診ていないため確かなことは言えない」としているが、いずれにせよ怪我の完治とスポーツ界へのカムバックは異なる。その先にも大変な努力が必要となるようだ。
■求められるのは不屈の精神
『ワシントンポスト』は、メリーランド大医学部の整形外科部長であるアンドリュー・ポラック氏の説明をもとに、脚の腫れで組織内圧が上昇して血行障害が生じ、組織に虚血をきたす「コンパートメント症候群」、および骨折部の骨の癒合がうまくいかなくなる「偽関節」という重い後遺症の懸念について触れている。
それでも、アスリートたちの怪我の治癒力や精神力には驚くものがあると称えるポラック氏。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する患者も多く、道のりは長く険しいものであろうが、強い精神力を保ち、辛いリハビリを乗り越えることをウッズ選手にも期待している模様だ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)