海外選手から「東京五輪不参加」の声 ワクチン接種遅れやIOC会長の「奨励」発言も一因か
ニュージーランドの今回の報道を受け、ほかの国の反応にも注目が集まっている。鍵となるのは、やはりワクチン接種だが…。
27日、ニュージーランド・オリンピック委員会(NZOC)の会長が、新型コロナウイルスのパンデミックを理由に、選手の一部が東京五輪に参加しないかもしれないと発言し始めたことを明らかにした。
今、世界各国のトップアスリートたちが「東京行き」の決断を求められている。これはニュージーランドに限った話ではないはずだ。
■五輪への情熱はあっても…
NZOCのケレイン・スミス会長が、国営ラジオ局『ラジオ・ニュージーランド』に話したところによると、代表団は200人を超えるアスリートと大会関係者で450人ほど。
しかし、ここにきて新型コロナウイルスが日本で大流行を見せていることから、五輪にはもちろん参加したいが安全性を確信できない、という一部の選手たちが、東京行きを躊躇するようになっていると明かされた。
なお先週、NZOCは代表団に「五輪の前にワクチン接種を終えておくことが望ましい」と奨励していた。
■東京は安全、安心なのか
新型コロナウイルスのワクチン接種こそが、安心・安全な五輪参加および開催のカギを握ると言われてきたなか、はっきり言って日本は出遅れている。
新規医薬品の審査体制が脆弱なのか基準が厳しすぎるのか、主要先進国で日本だけがワクチンの承認に至っておらず、選手や大会関係者を含む一般的な国民への接種は5月以降になるという。
しかし感染者数の急増で東京を中心に医療崩壊が起きており、肝心の五輪開催中に壊滅的な状態に陥るかもしれない。もはや日本の国民の8割が開催を支持していない。こうした一連の報道は、海外の人々にとっては不安でしかないだろう。
■訪日前の接種は各国バラバラ
ワクチンの承認がなかなか下りない日本に対し、苛立つ様子もなかったIOC。トーマス・バッハ会長は26日、各国の選手や関係者について「訪日前の接種を奨励したい。だが義務ではない」と述べた
競技中はもちろん、飛行機やバスでの移動、競技会場のロッカー、シャワールーム、食堂など、三密が避けられないなか、未接種かつマスクをしていない選手が多数存在する状況を想像し、おのずと「打たなくては」となるだろう。
ただし、参加を予定しているすべての国で、東京五輪に行くことを理由に優先的にワクチン接種を受けられるわけではない。
■「念願叶いやっと五輪に」
このたびBBCとのインタビューに応じたのは、初めて五輪競技としての採用が決まったスポーツクライミングに出場する、英国のショーナ・コクシー選手(28)だ。
2016年以降、ボルダリングのワールドカップで数々の優勝を経験してきた彼女にとって、五輪出場は選手人生の最高のイベントだといい、「ここまでじつに長い道のりでした」と語っている。
昨年、彼女は手首と膝の手術を受けており、万全なコンディションで五輪に臨むべく現在もトレーニングを欠かさないが、10代選手の活躍が目立つこともあり、五輪出場はこれが最初で最後となる可能性は少なくない。
こうしたアスリートたちのためにも、安易に中止や再延期を口にすることだけはしたくないものだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)