IOC会長の「東京五輪開催」発言と同日に「水面下で中止へ」報道 大ピンチに立たされる日本

莫大な額の利権が絡んでいるため、簡単には延期や中止を決められない五輪。それを「最初に誰が口にするか」も大問題だ。

2021/01/22 20:30

オリンピック・五輪

英紙『タイムズ』は21日付の報道で、日本政府は新型コロナウイルス感染拡大のため東京五輪の開催は絶望的だとして、非公式かつ水面下では中止を決め、代わりに2032年の東京での五輪開催を狙い、面目を保つ方法を模索している、などと報じた。

それが真実だとしたら、他国のメディアに先にすっぱ抜かれたことも含め、日本にとってこの状況はあまりにも苦しいことになるのではないだろうか。


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■空転する菅首相の言葉

東京五輪開幕まで残り200日を切ったあたりから、海外大手メディアによる「開催はもう無理なのでは」「なぜこれでできると思うのか」といった厳しい報道が増えていた。

菅義偉首相の「新型コロナウイルスに人類が打ち勝った証として、東京五輪・パラリンピックの開催を」という意気込みも、空転している印象がある。なぜなら、日本の世論調査で「回答者の約80%が五輪の再延期や中止を支持」という事実が、海外でもかなり報じられているからだ。

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■バッハ会長は開催に強い意欲

ただし米国の『Fox News/Sports』は、タイムズ紙の報道と同じ日に、国際オリンピック委員会IOCのトーマス・バッハ会長が共同通信に向けたコメントで、いよいよ真実が見えなくなっていることを報じている。

バッハ会長のコメントとは、「7月23日に開催を予定している。現時点でプランBはない。人々の安全確保のため、観客数を減らすほか、考え得る全ての予防策で成功に向けて努力する」「北京での2022年冬季オリンピックも計画通りに進むだろう」というものだ。

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■強い疑問を口にしたIOC委員も…

カナダの元競泳選手で、1979年からIOCの委員を務めているディック・パウンド氏は、少し前に「問題を直視せず無理に実施すれば、ウイルスの蔓延につながる」と発言するなど、東京五輪の開催に強い疑問を投げかけた一人だった。

だが、ここにきてパウンド氏も「開催の方向で努力する。中止するより無観客での開催も」との見解を明らかに。バッハ会長と足並みをそろえているようだ。


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■IOCより先に断念するわけには…

「2024年に予定されているパリ五輪を東京で開催したらどうか」という案も、欧米で強い支持を得ているようだが、基本的に五輪に関する最終決定権はIOCにある。

しかも日本が中止を発表することは、開催国として場所を提供するという契約を果たさないことを意味し、政府、東京都、大会組織委員会に対し、莫大な賠償金の請求が突きつけられるともいわれている。日本は中止や断念といった言葉を、IOCより先に口にするわけにはいかないのだ。

「水面下で」「非公式にではあるが」といった表現が添えられているとはいえ、「IOCより先に日本側が中止を決定」などと報じられてしまったこの状況は、日本にとって非常に痛いというほかない。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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