マヂカルラブリー優勝の『M−1』が賛否両論である理由 正統派の敗北
2020年度の『M-1グランプリ』はどのような大会であったのだろうか。その賛否両論を背景に本大会を考察。
■ギリギリの判断か
優勝したマジカルラブリーに票を入れたのは他3人であったが、そのうち立川志らくのコメントは興味深い。志らくは、おいでやすこがを一番の好みとしながらマヂカルラブリーに入れたのであった。
どちらが漫才として優れているかがマヂカルラブリーということだろう。志らくが、おいでやすこがに1票を入れればそのまま優勝であり、ギリギリの判断が勝敗を分けたと言える。
■正統派に勝利した今年の『M-1』
今回の『M-1』は以上のように、「しゃべくり漫才」の伝統を破壊するような『M-1』であったと言える。
賛否両論が巻き起こるのは、いつのまにか多くの視聴者が「しゃべくり漫才」の伝統を『M-1』を通じて血肉化させていたことになる。単に「しゃべくり漫才」がシンプルで理解しやすいということもあるだろう。
様々な面からしてこのまま正統派漫才が廃れてはいかないように思える。しかしながら、必ずしも漫才を伝統の型との近さで評価すればよいわけではないだろう。
今回の『M-1』は、総じて、「しゃべくり漫才」と距離をとった形で漫才の新しい形を切り拓いた、非常に有益な大会だったと言える。
・合わせて読みたい→『M−1』松本人志が番組ラストに伝えた思いに反響 「泣いてしまった」
(文/メディア評論家・宮室 信洋)