観光客のスピードボートに甲羅を砕かれたウミガメが脊髄損傷 安楽死も続く
マリンビジネスが盛んになるほど、静かな涙を流しながら消えていく海の生き物たち。それは人間のエゴでしかないというのに…。
このコロナ禍においても、観光業が賑わいを取り戻してきている現在のアメリカ。冬の到来とあって、ハワイ州は特に人気の観光地だ。
そんな中で頻発しているのが、スポードボートがウミガメに衝突する事故だという。米国のメディア『California News Times』『8News Now』ほかが伝えている。
■観光用スピードボートが…
米国・ハワイ州の州土地自然資源局(Hawaiʻi Department of Land and Natural Resources・以下DLNR)が今月11日、悲しい事故の話題をフェイスブックに投稿した。
カウアイ島ギリンズビーチ地区のマハウレプ沖で、観光客を乗せたスピードボートがウミガメに衝突。そのウミガメは、安楽死に追い込まれたという。
■脊髄と肺を深くえぐる
スピードボートのスクリュープロペラは、体重68キロのウミガメの甲羅に大きな穴を開け、脊髄と肺を深くえぐった。まったく動けないことから、診察にあたった海獣医は安楽死が最善と判断したという。
DLNRの職員はフェイスブックに、「ボートに衝突されたウミガメは、残念ながらまず生き残れません」と綴っている。
■同様の事故が今年22件も
ハワイ州は本土と比べれば、新型コロナウイルスの流行をぐんと抑えられていたこともあり、観光業がまた盛り上がりを見せている。しかし今年3月から同様の事故が22件も起きており、ほとんどのウミガメが安楽死させられていた。
ウミガメたちは、治療のためマウイ島にある非営利組織「マウイ・オーシャンセンター海洋研究所(Maui Ocean Center Marine Institute)」のリハビリ施設に運ばれるが、その後に海に戻れたのはわずか1頭だけだという。
■衝撃に気づかないボート
「たとえウミガメにぶつかっても、スクリュープロペラが甲羅を粉砕しても、ボートに乗っている人たちは衝撃になかなか気づかない。だからこそ、ウミガメの存在に注意を払う必要があるのです」と話すのは、DLNR・海洋レクリエーション部の責任者であるエド・アンダーウッド氏だ。
事故は比較的浅い海域で発生しているといい、「大変な速度を出すスピードボートをはじめ、どの船舶ももっと減速してほしい」と強く訴えている。
・合わせて読みたい→女性モデルが海での撮影前に溺死 意外な疑惑から警察の調査が続く
(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)