井筒和幸監督、8年ぶり新作『無頼』のテーマは「ザッツ昭和史」
井筒和幸監督が『活弁シネマ倶楽部』に登場。「昭和というものはいったい何だったのか? ということを、ヤクザ映画のかたちで語った」と明かした。
2020/12/14 05:15
■『ミーン・ストリート』と『ガキ帝国』
また、森氏は「『アイリッシュマン』は1950年代から80年代まで の戦後アメリカの裏面史で、ある象徴的な人物を置いて、3時間半の尺の中にその裏面史を入れ込んでいる。ここの構図が似ている」と分析。そして、スコセッシ監督作における『ミーン・ストリート』が、井筒監督の場合は『ガキ帝国』だと話した。
森氏は、自身が井筒監督のファンである理由を、「日本では数少ない、“本物のストリートの作家”」だと述べ、「そんなストリート派が、戦後論の叙事詩を撮ったらどうなるかという答えが、この『無頼』であり、スコセッシ監督の『アイリッシュマン』」だと論じている。
■じつはパクリ?
ここで再び話題は『ゴッドファーザー』へ。同作はマフィアの世界を描いた話でもあるが、三兄弟の物語でもある。
『無頼』のマサジ(松本利夫)は三男坊であり、『ゴッドファーザー』でアル・パチーノが演じるマイケルも三男坊。これについて、井筒監督は「じつはね、パクってきてる」と笑いながら正直に明かした。
■井筒監督は「バランスの人」
また、森氏が「本作を観て、井筒監督のバランス感覚に痺れた」とコメントすると、井筒監督は「バランス感覚なんてものは、ハナからない」と返答する。
それでも、森氏は「商業娯楽映画の中で、ハードコアな作家映画を作ってきた井筒監督は“バランスの人”だ」と改めて主張。「今回の『無頼』で言えば、視点がずっとニュートラル。どこにも依らず、真ん中を駆け抜いていっている」と、その理由を説明した。
すると、井筒監督自身も「突き放して描こうと思った。(ヤクザ者である彼らを)冷たく見つめることが必要だと思った」と、この作品や、劇中に登場する人物たちに対する姿勢を明言した。
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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)