大量飲酒の女医に実刑判決 人工呼吸器や酸素マスクもまともに扱えず患者が死亡
前の病院を解雇されていた事実と、その理由を調査していなかった医師バンク。こちらにも批判が集まっている。
医療過誤の話題が多々報じられてきたが、医師が深酒のうえで処置に当たり、様々なミスを犯していたなどという事例は滅多にない。その、あり得ない事例がフランスから伝えられた。患者が悲惨な死を遂げていることから、禁錮3年という量刑にも「軽すぎる」との声があがっている。
■誤った処置を繰り返す
フランス・ピレネー=アトランティック県のポー市で、このほどベルギー国籍のヘルガ・ワウテルズという51歳の元・麻酔科医に対し、裁判所が3年の禁錮刑を言い渡した。
ワウテルズ被告はオルテスという郊外にある私立病院に2週間ほど勤務していたが、誤った処置を繰り返して1人の女性患者を死なせ、過失致死罪に問われていた。判事はさらに被告に対し、患者の遺族に日本円で1億7,300万円ほどの損害賠償金を支払うよう命じている。
■気管用チューブを食道に
2014年9月26日、オルテスの病院の産科でシンシア・ホークさんという28歳の妊婦について緊急帝王切開が必要になった際、ワウテルズ被告は処置のミスを重ねた。
気管に挿入するはずのチューブを誤って食道に押し込み、ホークさんは激痛を訴えて嘔吐した後、脳の酸欠状態に陥り心肺機能が低下。人工呼吸器が必要にもかかわらず、酸素マスクを装着させるなど被告の処置はことごとく誤っていた。
赤ちゃんは誕生したが、母親のホークさんは我が子を自分の腕に抱くこともできないまま、4日後に死亡している。
■朝起きてすぐにウォッカ
ほかの医師が、手術室のワウテルズ被告が大変アルコール臭かったことを病院側に報告。血液検査の結果、グラス10杯のワインを飲んだのと同レベルの1リットルあたり2.38グラムという高い血中アルコール濃度を示したことから、被告はただちに解雇された。
その裁判の法廷で、ワウテルズ被告も自身のアルコール依存を認めている。「朝起きるとまずはウォッカの水割りを飲む。これが過去10年間の私の日課だった。手の震えを止めるため、仕事の前にも飲む必要があった」などと述べたという。
■2つの病院で解雇処分に
法廷では、深酒のうえ処置を行ったことについて反省の弁を述べるも、「人工呼吸器が作動しないという別の問題が起きていた。患者の死の責任は別のスタッフにもある」と主張したワウテルズ被告。
しかし、祖国ベルギーでもアルコール依存が原因で2ヶ所の病院を解雇処分になっていたことが明らかになり、今後はフランスでも医療行為に関わることを一切禁じられた。
以前に勤めていた病院をなぜ辞めたのか、その理由を調査することなく麻酔医として登録させていた医師バンクにも批判が集まっている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)