大気汚染はパーキンソン病やアルツハイマー発症にも関与? 6300万人超の調査結果が公開

「決してかかりたくない」と、誰もが強く感じている各種の神経変性疾患。リスク要因を知り、回避したいものだ。

2020/10/25 18:20

大気汚染
(CHUNYIP WONG/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

パーキンソン病やアルツハイマー病については、自身が遺伝子的なリスクを抱えているかどうかも気になるが、発症の引き金になるものも知りたいところだ。そんな中、英米の共同研究チームが17年にわたる調査の結果をまとめて有名医学誌に報告し、多くの人の関心を集めている。


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■大気汚染の恐ろしい害

医学誌『ランセット・プラネタリー・ヘルス』に、次のような発表があった。

「パーキンソン病やアルツハイマー病などに代表される神経変性疾患の発症に、大気汚染も大きく関与することが判明した」


「特に深刻なのはPM2.5。その悪影響を受けるのは呼吸器や心血管だけでなかった」


ハーバード大学公衆衛生大学院の生物統計学を専門する研究チームと、イギリスの生態学・水理学研究センターの研究チームが共同で発表したものだ。

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■6,300万人超を17年追跡

調査は神経変性疾患の発症リスクに焦点を当てたもので、6,300万人を超える米国の高齢者を対象に、17年にわたる観察が続けられた。

神経変性疾患にはパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などがあり、大気汚染との関連性が指摘されることは以前にもあったが、これほど大規模な調査の結果が発表されたのは初めてだという。

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■「まさか脳までとは…」

研究チームが特に危険だと指摘するPM2.5。これはインドや中国はもちろん、日本でもたびたび話題になっている大気中に浮遊する有害な微小粒子状物質だ。

研究チームは、調査対象者が暮らす土地ごとに空気1立方メートルあたりのPM2.5の濃度を測定。1年の平均値が5マイクログラム高くなるごとに、パーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患により入院・治療を受ける割合が13%も増えることを突き止めた。


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■影響をより受けやすいのは?

PM2.5は微小粒子状物質のため、脳に侵入して徐々に蓄積されていくことも考えられる。しかし、それがパーキンソン病やアルツハイマー病の発症秩序にどのように関わっているのかは、現時点ではまだ解明されていない。

大気汚染の深刻な都市部で、より神経変性疾患の発症率が高くなるというのは想定の範囲だったというが、有色人種より白人、男性より女性が影響を強く受けやすいことも判明し、このあたりは今後の研究課題になるという。


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■「基準値をより厳しく」

英国の生態学・水理学研究センターのステファン・リース博士は、この研究を踏まえたうえで、「従来のPM2.5の健康リスク評価では基準値が甘すぎる」と批判している。

「おそらく安全であろう」という1立方メートルあたりの年間平均濃度の基準については、米国をはじめとする多くの国が現在「12マイクログラム以下」と定めているが、リース博士はこれを10マイクログラム以下に引き下げるべきではないかと指摘。

WHO(世界保健機関)もより厳しくする方向で検討しているという。

ちなみに、我が国の同基準値は平成21年に環境省が告示した「15マイクログラム以下」。そもそもハードルをかなり低く設定していた日本だが、このままで良いものか、再び検討が必要になっているのではないだろうか。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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