「もうすぐゴールだと思うんです」 漫画家・まんきつがアル中を乗り越えた3種の神器
漫画家・まんきつ氏の『アル中ワンダーランド』が5年の時を経て文庫化。作品に関する話を本人に聞いてきた。
アルコール依存症による体験談を題材とした大ヒット漫画『アル中ワンダーランド』が刊行され、5年が経った今。断酒後エピソードの書き下ろし漫画や著者が畏敬の念を抱く漫画家・吉本ばなな氏との対談を追加した文庫版が、9月25日に発売された。
今回は著者のまんきつ氏(旧まんしゅうきつこ)にインタビューを実施し、作品について話を聞いてきた。
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■漫画制作のきっかけは…
2019年に筆名を変更したため、今作、つまり文庫版では旧筆名の「まんしゅうきつこ」ではなく、「まんきつ」となっている。なお、改名して反響はあったのだろうか。
まんきつ:読者の方から「店員に本の場所を聞きやすくなった!」「友人に勧めやすくなった!」と聞いて、よかった〜と思いますし、私も気に入ってます。
インタビューにあたり作品を拝読すると、今までに触れたことのない面白さの反面、飲酒という身近な行為が題材のため「怖い」という感情も同時に抱いた。聞くと世間の反応も同様だったそうで…。
まんきつ:そうなんですよ、本当に。「面白かった」という意見と「怖かった」という意見が多かったですね。
———ちなみに、本作は自身の経験を元に「アルコール依存症への啓蒙」的な意図で制作されていたりするのでしょうか。
まんきつ:じつは意図は特になくて。ただ、私が「アル中って診断されたんだ〜」って編集の方に話したら、「じゃあその経験を漫画にしましょう!」みたいな流れで。まさか漫画になるとは思いませんでしたね(笑)
予想外な展開で、初めは「どうしよう…」と困惑したのですが、書き始めたらどんどん意識が変わっていきました。当時のアルコールでボロボロだった自分に寄り添えるようになって、ある種のセルフカウンセリングみたいな感じです。
「ということは…同じように悩んでいる人に届いたら、励みになるかもしれない」っていう少し傲慢なことも考えたりしましたね。
■対談ではテンション爆上がり
5年の時を経て文庫化されることについてうかがうと、喜びの反面照れ臭さもあるという。
まんきつ:恥ずかしくてあまり読み返せないんですよ(笑) 自分の書いた文章とか絵って恥ずかしくないですか? でも、デビュー作みたいなものなので、愛着は湧きますね。
———そして今作では、敬愛する吉本ばなな氏との対談も見どころですね。
まんきつ:そうですね。25年ほど前に荻窪に「湯~とぴあ」というサウナがあったんです。そこに吉本ばなな先生とさくらももこ先生がお二人で通っていると聞き、当時漫画家アシスタントとして働いていた私が仕事の徹夜明けに行くくらい好きな方なんです。
なので、(対談を見返すと)私すっごい嬉しそうだなって自分でも思います。まさか会えるとは思ってなくて、ただのファンミーティングみたいになってましたね(笑)