症例56件のみの獣人化現象「ゾアントロピー」 自身を鶏と主張した女性を認定

まだまだ不明点だらけだと言われている「脳」。この現象も今後にさらなる研究が必要だという。

2020/08/02 17:20

鳥のまね
(panic_attack/iStock/Getty Images Plus/写真はイメージです)

自身を獣人化させてしまう「ゾアントロピー(zoanthropy)」という現象をご存じだろうか。これを発症すると人間らしい声や言葉を失い、一定時間ある動物にそっくりになってしまうという。英メディア『The Telegram』などが報じ、大きな関心を集めている。


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■珍しい精神・心理現象

ベルギーのルーヴェン・カトリック大学の研究チームが精神医学の専門誌『Tijdschrift voor Psychiatrie』に、「ゾアントロピー」という極めて珍しい精神・心理現象を発症した女性患者について論文を寄せた。

その診断が下ったのは、薬局に勤務する54歳の既婚女性。精神科の病棟で投薬治療を受けて数週間で退院し、1年後には仕事に復帰している。

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■「私がまさかそんなことを」

言動が奇妙だとして、兄に連れられ病院を受診したというその女性患者。兄は医師に「鳥のように振る舞い、頬を膨らませてコッコッコと音を立てた」「雄鶏のような甲高い鳴き声を得意げに上げる様子に大変驚いた」と説明した。

女性患者は自分を鶏だと主張したが、強い痙攣発作を起こすと同時に、普段通りの人格を取り戻したという。

医師にそれまでの数時間の様子について尋ねられた当人は、足に不思議な感覚があることを説明。ただし鶏のような振る舞いについては記憶が乏しく、「自分がまさかそんなことを」と深く恥じ入った様子だった。

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■妄想の中で自身を獣人化

ドラッグやアルコールは嗜まないが、数ヶ月前に最愛の家族を亡くして以来、うつ症状に苦しんでいたという女性患者複数の医師が観察を続けた結果、妄想の中で自身を獣人化させていく「ゾアントロピー(zoanthropy)」と呼ばれる現象が起きたものと診断された。

これは統合失調症、精神病性うつ病、あるいは双極性気分障害などが認められる患者に稀に発症し、症状は1時間以上続く。農村部での発症例が多い理由なども含め、今後にさらなる研究が必要だという。


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■世界でわずか56例

鳥ばかりか、ライオン、トラ、サメ、ワニ、ウシ、ネコ、ウサギ、馬、ヘビ、ネズミ、蝶になり切った例も確認されているゾアントロピー。しかし1850年から2012年まで、世界でわずか56しか症例が報告されていないそうだ。

犬の吠え声や仕草をとても上手に真似する者が、前世は犬だったに違いないなどと語ることがあるが、それだけでゾアントロピーとは診断されない。基礎に脳機能障害や精神疾患があることが前提になるという。

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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ

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