新型コロナ感染で耳にもダメージか 米大学・頭頸部外科の研究チームが発表
新型コロナでやられるのは嗅覚・味覚だけではない。聴覚に変化が現れるケースもあるようだ。
耳とは音声を聞き取り、体の平衡感覚を保ち、気圧のバランスにも反応する器官だ。その大切な耳が、新型コロナウイルスに感染することでダメージを受ける可能性があるようだ。
■新型コロナで耳の不調
米国医師会が発行する、頭頚部領域の疾患に特化した査読付きの医学雑誌『JAMA Otolaryngology–Head & Neck Surgery』。
このたびここに、新型コロナウイルスの感染後に現れる耳の不調について米・名門大学医学部の研究チームから興味深い論文が寄せられ、高い関心を集めている。
同ウイルスへの感染で味覚や嗅覚の異常が現れるケースはよく知られているが、耳の不調を訴えるケースがあることも忘れてはならないそうだ。
■頭頚部外科のチームが剖検
新型コロナ感染者における「耳の聞こえづらさ」「耳周辺の強い痛み」に着目したのは、ジョンズ・ホプキンス大学・頭頚部外科の研究チーム。
彼らはテキサス州ヒューストンのユナイテッド・メモリアル・メディカル・センターで死亡し、献体の協力が得られた80代の女性1名、60代の男性女性1名ずつの計3名について剖検を行った。それぞれ死後16時間から48時間が経過していたという。
■中耳や耳の後ろの骨に…
その3名の耳の奥や周辺について詳しく調べた研究チームは、それぞれの左か右、あるいは両側の中耳、そして耳の後ろの骨の「乳様突起」と呼ばれる円錐状の突起部分で、新型コロナのウイルス量が特に高いことを突き止めた。
この骨の内部はハチの巣状の細かい空洞になっており、ウイルスの棲み付きやすさという点では、肺や副鼻腔によく似ているという。「新型コロナ感染と耳の不調には関連性があった。耳の変化もひとつの症状と捉えることができるだろう」と研究チームは論じている。
■「耳鼻科でも注意を」
鼓膜の奥や耳の後ろに強い痛みを訴えて急性中耳炎と診断された患者が、じつは新型コロナだったという例や、新型コロナを経て聴力が低下したという例が、これまで世界各地で最低でも20名ほど確認されている。
研究チームは、原因不明の難聴や耳の痛みを訴えて耳鼻咽喉科を受診する新規の患者について、念のためウイルス感染を疑うよう注意を喚起。中耳の滲出液にウイルスが潜んでいる可能性を視野に、吸引除去は慎重に行い、器具の徹底消毒をと呼び掛けている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)