腕立て伏せ中に脳卒中 健康な20歳男性の脳に発見された奇形とは
運動により頭痛が起きる人は少なくないが、稀には深刻な病気が潜んでいるケースも…。
健康的な生活を心掛け、運動も欠かさなかったある若者の身に、突然の不幸が襲った。腕立て伏せをしていたところ激しい頭痛に見舞われ、病院へ救急搬送。そこで緊急手術が行われたが…。
■腕立て伏せの最中に…
オーストラリア・メルボルンのサミュエル・オサリバンさんは、警察官として就職も決まり、熱心に体を鍛え続けていた。そして21歳の誕生日を迎える1週間前の5月27日、夕食後に自室で腕立て伏せをしていたところ、激烈な頭痛に見舞われ、大きな叫び声を上げたという。
モナシュ病院に救急搬送されたサミュエルさんには脳内出血が確認され、緊急の開頭手術が行われた。さらに追加の手術がその48時間後に行われ、出血で生じた「圧」を抜くことには成功した。
しかし現在のサミュエルさんは、すべてにおいて介護が必要な状態にある。今後、あらゆる種類のリハビリテーションが必要だという。
■10万人に1人の血管の奇形
詳しい検査の結果、サミュエルさんの脳には「脳動静脈奇形」があることも判明した。これは生まれつきの血管の奇形で、脳内において、動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながっている部分がある状態だ。
遺伝する病気ではないが、10万人に1人の割合で起きているという脳動静脈奇形。片頭痛、けいれん発作や手足の麻痺で検査を受け、発見されることもあるという。
■「脳動静脈奇形」とは
国立循環器病研究センターは、公式サイトで「脳動静脈奇形」について以下のように説明している。
・動静脈奇形の部分では血液が異常に速く流れ、壁が薄いため血管が破れやすい。
・出血の好発年齢は20~40代で2:1で男性に多い。脳出血、クモ膜下出血、あるいはその両方となる。
・放置により毎年2~3パーセントが出血を起こすと考えられ、出血で脳動静脈奇形が発見される例が少なくない。
・治療は病巣のサイズ、形態により、開頭手術とガンマナイフ(集中放射線療法)を組み合わせて行われることが多い。
■経験者も多いエクササイズ頭痛
運動中やその後に、「エクササイズ頭痛」と呼ばれる、一過性ながら非常に辛い頭痛を発症する人は少なくない。運動が血流に影響を与え、脳の血管を拡張させることが原因だと考えられており、いったん始まると2日間続く人もいるという。
それが、かつてない激烈な痛みである、吐き気や嘔吐がある、頭痛が長引き意識が薄れてきた、などという場合は、脳動静脈奇形ほか深刻な病気ではないことを確認するためにも、早めに医療機関を受診するほうが良いそうだ。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)