ロックダウン段階的解除もクラスター発生のドイツ 「元の木阿弥」状態か
ロックダウン(都市封鎖)の段階的解除に踏み切る都市・国が増えてきた。慎重に判断されるそのタイミング。しかし「クラスター」が発生すればまた逆戻りだ。
無症状あるいは軽い風邪のような症状の人々が、気づかないうちに周囲に感染を広げてしまう新型コロナウイルス。ワクチン開発がまだというなか、早々に収束を図ることがいかに難しいか、ドイツの最新の状況が話題になっている。
■次々と再開となる経済活動
ドイツのメルケル首相は6日、新型コロナウイルスの流行が目標としていたレベルまで鈍化したとして、ロックダウン(都市封鎖)を段階的に緩めていくことを発表した。
5月9日午後5時現在、フランスと並んで17万名を超す新型コロナウイルスの感染者が確認されているドイツだが、フランスが2万6,000人を超す死者を出しているのに対し、ドイツは7,500人。欧州でもその健闘ぶりが大きく報じられてきた。
すでに小規模店舗や、美容院、礼拝堂、博物館、記念碑、動物園、公園などが再開を始めていたが、メルケル首相のその発表を受け、ジム、大型店舗などの営業再開に加え、サッカー・ブンデスリーガも無観客ではあるが15日から再開と知り、国民もおおいに沸いていた。
■段階的解除に添えられた条件
経済活動再開は16州の代表と政府の共通の願いだが、むしろ段階的な解除のその後こそ、国民には強い緊張感が必要だ。
第2波の到来を懸念するメルケル首相は、公共交通機関や店舗を利用する際のマスク着用、ソーシャルディスタンス、消毒の徹底を義務づけ、決して気が緩まないよう全国民に協力を呼び掛けている。
さらには、こんな条件も添えられた。「もしも10万人あたりの新たな感染者が7日間で50人に達した州は、再びのロックダウンもやむなし」というものだ。
■クラスター発生が収束を阻む
大きなクラスターが発生すれば、ロックダウンに逆戻りとなるその厳しい条件。発表より数日も経っていないというのに、すでに3つの州が段階的解除を断念せざるを得なくなってしまった。
コースフェルト市の食肉処理場の従業員1,200名のうち、150名の集団感染が確認されたノルトライン・ヴェストファーレン州。やはり食肉処理場でクラスターが発生した最北端のシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州。
そして6ヶ所の介護施設と1ヶ所の高齢者向け医療施設で職員や利用者・入所者・患者の間からクラスターが発生するなど、過去7日間の感染者数の合計が10万人あたり80人を超えたチューリンゲン州だ。
■現実は厳しい
クラスターがいつどこで発生するかわからない、目に見えぬ新型コロナウイルスとの闘い。「収束までには長期戦を覚悟」とメルケル首相も語ってはいたが、あっという間に現実の厳しさを突きつけられた形だ。
小規模な集会、バー、レストラン、遊技場、競技場の再開と一般人への開放などが次の解除のステップとなると考えられてきたが、「これでは二の足を踏まざるを得ない」という声も上がっている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)