「咳をするなら腕で」乗客らに訴えたバスの運転士 12日後に無念のコロナ感染死
今、咳をしている人に近づくことは不安だ。そうは思っても近距離で接客しなければならない職業もある。
日本時間の4月5日午後3時半現在、311,500名を超す新型コロナウイルスの感染者と8,499名の死者が確認されているアメリカ。デトロイトがあるミシガン州も感染者数14,225名、死者540名と深刻だ。そんな中、ある一般人男性が自撮りで投稿した1本の動画に大きな注目が集まっている。
■バスの乗客がゴホゴホと咳
米国・ミシガン州デトロイトで、長年にわたり路線バスの運転士として働いていたジェイソン・ハーグローブさん。彼は3月21日、デトロイト市民に咳エチケットを守るよう訴えかける動画を自撮りし、Facebookに投稿していた。
ジェイソンさんが運転するバスには、連日のようにマスクをせず、口元を覆うこともせず咳をする客が乗って来る。彼は動画で「そのような状況では、周囲の乗客や自分がいつ感染するかわかったものではない」と不安や恐怖を口にしていた。
■運転士が乗客から感染か
ところがその数日後にジェイソンさんは発熱。いちじるしく体調を崩して入院し、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していることが判明した。乗客からの感染が疑われるなか容体はみるみる悪化し、重症肺炎に陥っていったという。
そして動画投稿から12日後となる今月1日夜遅く、治療の甲斐なくジェイソンさんは息を引き取った。享年50。ベテラン運転手としてまだまだ働けるはずだった。
■咳エチケットの真剣な訴え
咳をするなら必ずエチケットを守ってほしいとして、バスの利用者たちに「今日も女性の乗客がひどい咳をしていた。口を覆うこともせず咳をする様子には本当に腹が立った。『ひょっとしたら自分は新型コロナウイルスに感染しているのかもしれない』と考えて行動してほしい」などと動画で訴えたジェイソンさん。
「ウイルスをまき散らせば周囲に感染させるという事実を、どうかもっと真剣に受け止めてほしい」とも述べていた。彼の無念の死に哀悼の意を込め、今、米大手メディアが続々とその動画を紹介している。
■近距離で接客する職業は多い
ジェイソンさんが抱えていた大きな不安と恐怖は、公共交通機関の運転士だけのものではない。病院、ホテルのフロント、空港、役所、駅、スポーツ・レジャー施設、飲食店、福祉事業所ほか、大勢の客を迎え、近距離で会話し、同じ空気を共有することになる職業はゴマンとある。
そんな環境で働くすべての労働者の心境を代弁したジェイソンさんだが、心配された「まさかの日」がこんなにも早く訪れ、悲劇的な結果を迎えたことに関係者も家族もショックを隠せずにいる。
全世界を脅かす憎き新型コロナウイルスの終息をひたすら願うなら、我々も咳エチケットと自宅待機の徹底を強く意識しなければなるまい。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)