立憲民主党・中谷一馬青年局長に聞く 「少子高齢化問題の解決が最大の経済対策」

母子家庭、貧困の中で育ち、いったん中卒で社会に出た後、ベンチャー経営者に。異色の経歴の若き青年局長だ。

■「出産・育児費用は無料」など積極策を

立憲民主党・中谷一馬衆院議員

社会保障関連予算34兆円、その中で少子化対策関連が5兆円という現状。これでは急速に進む少子高齢化には対応できないことは明らか。世代間の利害も対立する課題をどのように解決していけばよいのだろうか。

意見を聞いてみたところ、「私自身は明確な答えを持っています。ただ党の見解とは必ずしも一致しない可能性があるので、中谷個人の見解なのですが…」と断って話してくれた。

中谷:2010年の民主党政権の頃、私は当時財務大臣の秘書でしたが、財務省からは「債務残高をこれ以上積み上げるとギリシャみたいに破綻してしまう、金利も上がってしまう」と説明されていました。「財政の健全化をしないといけないし、国の借金をどう返すか考えないといけない」と。


しかし、その時より今のほうが債務残高が積み上がっているのに、今はむしろマイナス金利。説明されてきたことと全く違う状況です。


こうした状況から私が理解したことは、債務残高の数値が積み上がっていること自体が財政の健全・不健全という話ではなく、国債を発行したことで金利や物価がどのように変動するのか、インフレ率がどうなったかなどが本来は見るべき指標だということです。


現在は、インフレどころか20年以上デフレが続いていて、マイナス金利ですから、まだまだ財政出動できるゆとりはあるということです。


もちろん無限に使えるわけではなく、ある時に金利は上がり始めるわけですからマーケットに着目をしながらバランスを取る必要がありますが。


たとえば、「出産・育児にかかる費用を5年でも10年でもタダ(無料)にする」といった政策を打ち出せば、出生率は回復してくるでしょう。フランスではPACSなどの多様なパートナー制度に加え、3歳から就学率ほぼ100%の保育学校が無償で完備されています。


そして、1994年には無痛分娩が全額保険負担になりました。その時の合計特殊出生率が1.66、そこから出生率が回復し始めて2010年には2.00を超えています。


このように国が、出産を手助けし、子供を無料で預かり、教育をしてくれる。経済的にゆとりがない夫婦にとっては出産・子育てのハードルが下がり、子供を産み育てやすくなる。


経済的に見ても、マーケットは人口規模や構造で大きく左右されますし、当然ですが子供が多くいる国や地域には未来を感じます。


こうした観点からも長期的な目線で人への投資をしていったほうが、国内外の国債を購入している投資家も信頼してくれるのではないでしょうか。


それは結果として、経済成長や社会保障など少子高齢化の課題を解決することに繋がり、持続可能な社会への道を切り拓きます。


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■短期・中期・長期で考える成長戦略とは

さまざまな課題に直面する日本だが、これからどのような成長戦略を描けばいいのだろうか。中谷議員は、時系列にわけて3段階で解説する。

中谷:2040年には社会保障費は51兆円くらいになると言われていますが、消費税1%で約2兆円強ですから、消費税だけで社会保障費を賄おうとしたら単純計算でさらに8%くらい上げないといけないことになる。


また、OECD(経済協力開発機構)の事務総長は、「プライマリーバランスを黒字化するためには消費税率を26%くらいにしないといけない」と主張しています。


しかし現実問題として、8%から10%へたった2%消費税率を上げただけでも、これだけ生活や消費動向が厳しくなっている現状があります。


多くの人が経済的にも社会保障的にも厳しくなる時に、そんな消費税率にあげていくことの方が現実的ではないと思いますし、そもそも消費税でしかその問題が解決できないような凝り固まった思想を柔軟にする必要があると考えます。


私的には、まず税構造自体を改善する必要があると思います。税の応分負担を考慮した税制体系にしないといけない。今は、お金持ちがもっとお金持ちになるようなシステムで、普通の人や貧困層の暮らしはどんどん厳しくなっている。


正規社員か非正規かでも大きな格差があります。その結果として消費が鈍く、需要が生まれないことから企業の投資意欲が湧かず内部留保が積み上がるのみで経済が成長しないという悪循環になっています。


だからこそ私は消費税は増税ではなく、むしろ減税し、一般市民の生活負担を減らすことが消費を喚起し、マーケットを元気にする起爆剤になると考えております。


中長期の成長戦略は、テクノロジーや人口構造にも関わるより大きなビジョンだ。

また中期的には技術革新が世の中を変えるという確信を持っています。テクノロジーを活用しようとする企業や個人、組織に対する助成をしっかりしていくことが少子化時代における労働力不足の解決にもなるでしょう。


ものづくり大国だった日本、メイドインジャパンがふたたび世界の中心で戦うことができるように第四次産業革命を全力で牽引したいと思います。


そして長期的には、少子高齢化の問題を解決することです。人口構造はマーケットそのものですから、最大の経済対策であり、持続可能な社会保障を守る政策です。


ここを根本的に改善していくことが重要。子供を産み育てやすい環境を国として責任をもって投資・整備していくべきです。


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■少子化対策には社会全体で責任を

もはや手の打ちようがあるのか、とも思われるほど急速に進む少子高齢化。中谷議員は、企業も含めた責任の分担について語った。

中谷:子供をもてない最大の理由は、お金がないから、お金がかかりすぎるからであるという調査結果があります。これを、お金がかからない制度に変えていくべきです。


一方で、労働人口5459万人の内、非正規社員は2036万人(37.3%)。そして非正規労働者の平均年収が179万円という現状がおかしい。これでは安心して家庭や子供を持つことできないのは当然です。


だからこそみんなの平均収入をあげていくことで少子化の解決を目指さなけらばならない。企業も公共を担う自負を持って挑んでほしいと思いますし、社会全体として、責任をもって額に汗して働く人がふつうに生活ができるあたりまえの適切な体制をつくっていくべきでしょう。


ボトムラインを上げていかないと国家としての成長は見込めませんが、技術革新と世界で戦える人材を育成することで、トップラインも伸ばさないといけない。


両方を押し上げていくビジョンが必要です。こうした初心を貫き、世の中をより良く改善していけるように粉骨砕身頑張ります。

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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト

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