ナイロン製のお玉やヘラでの熱調理 「有毒物質の溶け出し」を警告
この実験結果に「やっぱり」と感じる人は意外にも多いのではないだろうか。
お玉やフライ返しなど、キッチン用品選びがなかなか楽しくなっている近年。ナイロン製のカラフルなものも人気を呼んでいるが、その安全性はどうなのだろうか。
■かねてから不安の声が
オシャレなキッチンには素敵なお玉やフライ返しを…ということで、最近では金属製のものより軽量でかわいらしいと評判の、ナイロン製のものを使用する家庭が増えている。
だが、かねてから「本当に安心・安全なのか」と心配する声が。そんな中、独立した地位と権限を保ちながら食品、化学、製品の安全性について調査し、政府に報告する「ドイツ連邦リスク評価研究所(略称:BfR)」から気になる発表があった。
■予想よりはるかに悪い数値
耐熱性を強化させてあるナイロン(ポリアミド/PA)製の調理器具について2016年から始まっていたその実験。準備されたのは市販されているお玉、フライ返し、ヘラ、泡立て器などだった。
実験で注目されたのは、食品1キロあたり5ミリグラム未満が許容量のポリアミド(PA)オリゴマーという毒性が疑われる成分。
するとナイロン6,6(PA6,6)とナイロン6(PA6)が使用された調理器具の3割から、わずか摂氏70度でそれが溶け出し、許容量を超えて食品に移行していることが判明した。これは予想よりはるかに悪い結果だったという。
■肝臓と甲状腺に悪影響か
さらに「そのオリゴマーが肝臓と甲状腺の疾患をもたらす可能性があることがわかった」としているBfR。ナイロン(ポリアミド/PA)を含むエンジニアリング・プラスチック類は現代の人々の暮らしのすみずみにまで浸透しており、その毒性の真相には高い関心が集まっていた。
現在は、「欧州食品安全機関」が医療器具や調理器具の毒性に関するデータを急ピッチで収集しているといい、最終的なリスク評価は、たくさんの実験を重ねたうえで彼らにより示されるものとみられている。
■紅茶などのティーバッグでも
今年9月下旬にはナイロン、不織布PET、ポリプロピレンなどの袋が使用されているティーバッグから、マイクロプラスチックが大量に溶け出していることを「アメリカ化学会」が発表した。
摂氏95度の抽出でティーバッグ1袋あたり約116億個のマイクロプラスチックが、さらに小さなナノプラスチックが約31億個お湯に溶け出すことが判明したという。
■便中に排出されるとはいえ…
日常の食生活のなかで、私たちはプラスチックをかなり体に取り込んでいることがわかってきた。
便から排出されるとはいえ、それは摂取した全量なのか。体のどこかに蓄積され、神経も含め体内に悪い影響を及ぼすことはないのか、消費者からは「1日も早く事実を知りたい」との声があがっている。
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(文/しらべぇ編集部・浅野 ナオミ)