「白州の水を体現する」 今注目の日本酒『七賢』の改革と挑戦に迫る

日本酒好きに知られる名酒「七賢」は、甲斐駒ケ岳の伏流水で醸す唯一の酒蔵だ。

■酒造りに向かう姿勢

北原亮庫さん

「白州の水を体現する」をコンセプトに酒質や設備の見直しを図り、製品の数を3分の1へと減らし、ラベルのデザインも一新した。

この時、5%刻みで用意されていた精米歩合を「七賢」の七に関連付けて、37%、47%、57%、70%の4種類に統一し、熟成酒や山廃仕込みなど「白州の水」と寄り添って造れない商品はラインナップから姿を消した。

品揃えで勝負する酒蔵から、一つひとつの商品に対する情熱の密度が濃い酒蔵へと改革を進めたのである。しかし、その道のりは決して順風満帆ではなかった。

これまでのやり方を大きく変えることは難しく、失うものもあったという。そんな中、亮庫さんが何よりも力を入れたのは、自身を含む蔵人の酒造りに対するマインドだった。

北原(亮):酒造りに向かう姿勢が酒の質にも大きく影響します。「これでいいや」「こんなもんだ」と思えば、それ以上のものは決して造れない。


いくら設備がピカイチでも操るのは人の手。だからこそ、お酒に込める想いや向き合う姿勢が何よりも大切なんです。私自身も、醸造責任者として蔵人全員が納得のいくお酒を生み出せるよう貪欲に学び、賞を獲得できるお酒造りを意識してきました。


現在の七賢が存在するのは、組織が一丸となって「最高のお酒を造ろう」という想いがあったからだと感じています。


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■日本酒を「乾杯の1杯に」

現在の日本酒市場は醸造技術が目覚ましく進化し、蔵によって実に多彩な味を楽しめる時代となった。しかし、日本人の飲酒動向を見ると、全体の6割をビール・チューハイなどの「泡もの」が占め、日本酒はわずか7%だという。

そこで、「純米大吟醸の高級酒を出したところで、アルコール度数が高くて重たい日本酒は乾杯のシーンには向かない」と、亮庫さんは日本酒の裾野を広げるため、泡物市場への挑戦に乗り出した。

山梨銘醸

その時、亮庫さんが注目したのは地元の山梨県の名産であるワイン。酒の種類こそ違えど、スパークリングの研究も盛んな、この土地なら本物が造れると確信した。

地酒ワインの醸造の試験や研究を行っているワインセンターに足繁く通いシャンパンの製法を学び、構想から3年後の2015年、瓶内二次発酵の技術を取り入れた第1作目の発砲日本酒『山ノ霞』が誕生した。以降、「七賢」では毎年、新作のスパークリングを発表している。

北原(亮):スパークリング日本酒の開発は、来年開催される『東京2020オリンピック』を目標に向けて進めていました。


オリンピックの様々な乾杯のシーンで日本酒を「乾杯酒」として飲んでいただきたい。その一心で、2015年からスパークリングの開発に力を入れて、広く多くの方に周知していただく期間を増やしてきました。


スパークリング日本酒が広まることによって、「乾杯の1杯」が日本酒に置き換わる。そして、広く多くの人に日本酒を知っていただける大きな一歩になると確信しています。

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■理想の日本酒造り