「白州の水を体現する」 今注目の日本酒『七賢』の改革と挑戦に迫る
日本酒好きに知られる名酒「七賢」は、甲斐駒ケ岳の伏流水で醸す唯一の酒蔵だ。
2019/08/23 12:00
■「七賢」の名を広めたい
亮庫さんは継ぐ前に「広く世界を見て勉強したい」と、大学を卒業し、アメリカの販売代理店で半年間働いた後、「御前酒」を製造する辻本店(岡山県)で、酒造りと地域との関わり方について学んだ。そして、25歳の時、蔵に戻り「七賢」の酒造りに加わった。
しかし、なじみのある酒が、今飲むとしっくりこない。あちこちの酒を飲み研究してきた亮庫さんには、「田舎臭さがぬぐいきれないお酒。このままでは東京で勝負できない」と危機感が募った。
そこで、「日本のトップの市場で『七賢』の名前を知ってもらえるよう、勝負できる日本酒を徹底的に造っていこう」と改革を決意したという。
父親に頼み込み、名うての南部杜氏を迎え入れ、アドバイスを受けながら腕を磨き、2014年に30歳という若さで名実ともに醸造責任者となったのである。
■オンリーワンな「七賢の味」
試行錯誤の期間、亮庫さんは東京の市場で勝負できる酒造りのため、あらゆる酒米・酵母・麹を試し、他社のお酒を仕入れ同様の工程で酒造りを行った。しかし、全く同じ味を再現することができなかったという。
核となるものがほしいと悩んだ末、たどり着いたのは山梨銘醸創業のきっかけともなった「白州の水」であった。
北原(亮):全国1,400軒ほど酒蔵があると言われている中で、南アルプスの水系を使った酒蔵は山梨銘醸だけ。恵まれた環境であること、創業者がどんな想いでこの地に蔵を構え、どんなお酒を創りたいと想ったのかを私たちが理解することが大切でした。
そして、ただ闇雲にお酒を造るのではなく、「白州の水を体現する酒造り」を意識することで、オンリーワンの酒蔵として存在していけると確信しました。
この地を訪れるお客様は白州の中にある「七賢」を感じに来ています。木々や草花の鮮やかな色に透き通った空気…感覚的に入ってくる記憶を飲んだ時に、ふっと思い浮かべられるようなお酒を造ること。それが「白州の水を体現する」酒造りだと思っています。