「器が小さい」の声も ディズニーが4歳男児の墓石にスパイダーマンの彫刻を許さない理由
「そこまで愛されていたとは光栄です」という返事を普通は期待してしまうものだが…
世界中の子供たちに、素晴らしい夢と笑顔、そして感動を与え続けてきたディズニー。それは、キャラクターやブランドのイメージを並外れた努力で守ってきた結果でもある。
■闘病生活を支えたスパイダーマン
英国ケント州のメイドストーンで昨年12月、4歳の男の子が「白質ジストロフィー」でこの世を去った。この病は極めてまれな遺伝子疾患で、その家庭では6歳の姉も同じ病気と闘っている。
男の子はスパイダーマンの大ファンで、最後の休暇も家族とディズニーランドへ。たくさんの楽しい思い出とともに再入院し、スパイダーマンの人形を握りしめながら辛い治療に耐え、力尽き、そして天に召された。
そんな息子のために両親は棺の周囲を赤と青の風船で囲み、大好きだったスパイダーマンをテーマにした葬儀が営まれたという。
■「墓石に彫刻」は許可せず
その後、父親はウォルト・ディズニー・カンパニー(Walt Disney Company)に連絡し、「息子の墓石に大好きだったスパイダーマンの絵を彫ってあげたいので、許可していただきたい」と相談した。著作権使用料が示されれば、それもきちんと支払うつもりであったという。
だが彼らの答えは「ノー」であった。その代わり、男児の安らかな眠りに祈りを捧げる手書きのメッセージと、ディズニーのセル画を贈りたいと提案してきた。
これを受けて墓石業者も、「著作権の問題もあり、残念ながらディズニー社が許可しない限り困難です」と彫刻を断ってきた。期待していただけに家族の落胆は非常に大きい。
■ディズニーがこだわったこと
ディズニー側は父親に対し、このような理由を示してきた。
「多くの子供たちが、スパイダーマンに限らずキャラクターたちが実在すると信じているのです」
「スーパーヒーローたちは夢と魔法を売る不老不死の存在。こちらもそうしたイメージをあくまでも大切にしています」
「このような理由から、私どもは死に関するもの、たとえば葬儀、墓、墓地などがキャラクターの名前や絵を使用することを禁じております」
■議員も交渉に出馬
墓石にスーパーヒーローの絵が彫られていたところで、特に縁起が悪い、不快だといった気持ちにもならないとして、世間からは「ディズニーは器が小さい」といった批判の声も出ている。
メイドストーン自治区の議員らが改めてディズニー社に掛け合っているが、いまだ良い返事は得られていないようだ。
「夢を売る商売だから不死のイメージにこだわる」との主張を貫くディズニー。世界中の子供たちのためにイメージを守ることは大切だが、一方で、スパイダーマン人形を握りしめながら息を引き取った男児に、永遠の夢を見せてあげてほしいとも思われるが…。
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(文/しらべぇ編集部・浅野ナオミ)浅野 ナオミ