広島カープの愛されベテラン・新井貴浩が引退 非難のFAから出戻り、優勝に貢献

広島東洋カープの新井貴浩内野手が今季限りでの現役引退を発表した。

■出戻り選手にまさかの大声援

これまでの歴史において、FAで広島を去った選手がチームに帰ってきた例はない。新井はその初めてのケースとなり、「ファンからはブーイングを受けても当然」と覚悟していた旨を当時語っている。

しかし、いざマツダスタジアムで代打・新井がコールされると、スタンドからはまさかの大声援。「新井、おかえりー!」の声が四方八方から聞こえたと言い、新井は感動のあまり「今後のプロ人生は自分のためではなくファンのために」と心に誓った。

チームメイトの丸佳浩らからも「新井さん、どの面下げて帰ってきたんすか」などといじられたそう。その丸は、のちにお立ち台でも「助っ人外国人の新井選手が頼りになるんで」と発言するなど、たびたびネタにしている。

また、奇しくもこの2015年は黒田氏が日本球界に復帰した年でもある。渡米当時から「引退はカープで」と明言していたが、これを有言実行した形だ。世間では、その「男気」が話題となっていた。

そんな黒田氏の影でひっそりと広島に帰ってきた新井であったが、その存在感が際立つまでにはさほど時間はかからなかった。


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■クビになったベテランが大活躍

「右の長距離砲」を補強ポイントとしていた広島にとって、新井の存在はあくまで「保険」に過ぎなかった。のちに「神ってる」で話題となる鈴木誠也が台頭しつつあり、アントニオ・グスマンという新戦力も獲得していた。

首脳陣としては、彼らを軸に考えていたはずだ。彼らがケガや不振に陥った場合に備えて、「多少は使えるかもしれない」コマとして新井を置いていた。よって、当初は代打起用がメインになるだろうと見られていたのである。

しかし実際にグスマンが故障すると、4月7日の読売ジャイアンツ戦(マツダ)で、緒方孝市監督は新井を「4番一塁」でスタメン起用。これもあくまで「その場しのぎ」の人事だったはずだが、この新井がまさかの大活躍を見せることになる。

いつしか4番にはすっかり新井が定着し、オフには背番号を前所属時代と同じ「25」へ戻すことに。翌2016年4月26日にはNPB史上47人目となる通算2,000安打を達成し、「新井の2,000本安打をカープで見られるなんて夢にも思わなかった」とファンを狂喜させた。

阪神をクビになったも同然の形で古巣に拾われた40歳近いベテラン選手が、堂々と4番打者として君臨する姿など、当時は誰も想像できなかった。

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