妊娠すると依願退職を強要 有給消化も許さないワンマンブラック企業の恐怖実態
ブラック企業
■弁護士の見解は…
結果的に転職に成功したAさんだが、この企業にはどのような問題があったのだろうか。鎧橋総合法律事務所の早野述久弁護士に聞いたところ…
早野弁護士:妊娠した女性社員を退職させるというのは、仕事と育児・介護の両立を支援するために定められている育児・介護休業法の精神に反しています。
例えば、育児・介護休業法は、育児休業等を申し出た労働者に対する解雇その他の不利益な取り扱いを禁止しており(同10条)、また、事業主に対して、上司や同僚からの妊娠・出産、育児休業等を理由とする嫌がらせ(マタハラ・パワハラ)を防止する措置を講じることを義務付けています(同25条)。
Aさんが勤めていた会社が、育休を申し出た社員について解雇、契約更新拒絶、労働契約の内容の変更、降格等の不利益な取り扱いをしていたのであれば、育児・介護休業法違反になります。
また、妊娠中の女性社員を退職させる行為についても、その方法によってはマタハラとして不法行為が成立する可能性があるでしょう。
■有給取得の妨害には刑罰も
退職時の有給消化を会社に阻まれた経験者は少なくないかもしれないが、それについても早野弁護士は警鐘を鳴らす。
早野弁護士:有給休暇の消化については、労働者は、原則として有給休暇を自由に取得することができます。
会社は、事業の正常な運営を妨げる場合に限って有給休暇を取得する日の変更を求めることができますが、すでに退職日が決まって有給休暇の消化に入ろうとしている労働者に対して有給取得日の「変更」を求めることは事実上不可能です。
したがって、Aさんが勤めていた会社の有給休暇の消化を妨害する行為については、労基法39条違反となる可能性が高いでしょう。労基法39条違反には刑罰が定められており、このように会社が有給休暇の取得を妨害した場合には、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます(労基法119条1号)。
ブラック企業への対策として必ず検討すべきことについても、教えてくれた。
早野弁護士:人事評価については個別の事情によるところもあるので確たることは言いにくいですが、一般論としては、ワンマン社長が支配するブラック企業では、経済合理性に反した行為がとられる傾向にあります。
最初にブラック企業に入社してしまうと、そこで行われている不合理な慣行を当たり前のように受け入れてしまいがちですが、転職することでそのような間違ったマインドから解放されることも転職のメリットの一つといえます。
ブラック企業に就職してしまったかもしれないと感じたときに必ずとるべき対応策は、転職活動等を通じて外の世界を知ることでしょう。
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(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/日本リーガルネットワーク)