学校や保護者に認められる新たな高校生向けクイズ大会を 日本クイズ協会の挑戦に迫る
今年から高校生向けの『ニュース・博識甲子園』と全年代向けの『JQSグランプリ』が開催される。
■「クイズ体験会」が普及の布石に
2016年に始動した日本クイズ協会では、これまでに6回、メディア関係者向けのクイズ体験会を実施しており、参加者はのべ数百名に上る。
今年4月から協会の理事に就任した楠井朋子さんは、この体験会がきっかけでクイズの楽しさに触れ、今では新聞記者・ウェブメディア編集長の経験を活かして協会の情報発信をサポートしている。
また、理事の中には、クイズ研究会の顧問を務める高校の先生もおり、クイズ経験者に加えて幅広い視座も特徴だ。
さらに、これまでに東京・大阪で計3回実施された「小中高生向けクイズ体験会」も、今回の高校生向け大会につながっている。
斉藤:いらっしゃった保護者の方からは、「クイズはアクティブラーニングですね」というコメントもありました。クイズというと、まだ「なぞなぞですか?」と言われることもありますが、実際には知的好奇心で学んでいく能動的な遊びです。
ひとつのキーワードに対して、どの情報が肝なのかを編集していく。人に出題するコミュニケーションも含まれ、わからなかった問題を持ち帰って調べる復習の作業もあります。
■メディアリテラシーを育みたい
今回の大会は、ニュースアプリを提供するスマートニュース社が協賛している。なぜニュースアプリがクイズ大会を応援するのか、同社メディアコミュニケーションディレクターの松浦茂樹さんに聞いた。
松浦:『ニュース・博識甲子園』は、学校の勉強とも重なる幅広い知識=「博識」の部分に加えて、ニュースを読む力=メディアリテラシーが問われます。高校生でもスマホでニュースに触れるようになっていますが、量が多く質も多様化しているからこそ、騙されないスキル、調べるスキル、そして発信するスキルが必要です。
スマートニュースは、このスポンサード以外でもメディアリテラシープログラムをやっています。ニュースを読まなくても生きていける時代だからこそ、ニュースアプリを提供している会社としてアクションする必要があると思います。
松浦さん自身も、『アタック25』優勝経験を持つクイズプレイヤーだ。
松浦:私も『高校生クイズ』に参加し、大学ではクイズ研究会に所属していましたが、クイズの経験は、今のキャリアに活きています。クイズでは「嘘の問題」を出題すると怒られるので、ファクトチェックの癖が磨かれるんです。
ネットに落ちている情報で問題をつくっても、ガセネタのことも多いですから。高校生のときからこうした習慣をつけるのは、意義があると思います。そこに共感したため、協賛を決めました。
『ニュース・博識甲子園』は、7月16日に全国7都市で予選が開催され、8月25日には東京で決勝大会が行われる。参加費は無料で、決勝大会出場校の選手と引率の教師には、宿泊交通費も支給されるという。
■全年代向けのクイズ選手権も開催
高校生向けの『ニュース・博識甲子園』と同時に、全年齢向けのクイズ選手権大会『JQSグランプリ』も実施される。
斉藤:これまでクイズ界で行われていた「オープン大会」では、愛好家に向けた情報サイトはあるものの、広く世の中に向けて結果が報じられていません。JQSグランプリでは、新聞やニュースサイトなどに載るような発信力を高めたい。
社会での認知度や地位の向上は、プレイヤーが今よりもクイズを楽しみやすくなる環境づくりにつながると思います。そうして、新規のプレイヤーには体験や交流の場を、既存のプレイヤーには社会から評価される仕組みを、中高生には学校や親からの評価や安全に楽しめる場を提供していきたいです。
幾度もブームとなり、全国の学校にクイズ研究会が存在する一方で、演劇部や吹奏楽部のように全国高等学校文化連盟(高文連)の専門部もつくられていない競技クイズ。
協会は、高文連加盟に向けても活動していくとのことだが、こうした地道な普及活動にも注目していきたい。
・合わせて読みたい→地上波NGの奇問 ベストセラー作家の経済評論家がつくる「地下クイズ問題集」とは
(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト 取材協力/一般社団法人日本クイズ協会 )