安らぎと喜び、感動を伝える酒造り 話題作『山間』を生んだ新潟第一酒造の想い

戦後の酒蔵大合併で生まれた新潟第一酒造を取材。

■「安らぎと喜びの感動を伝える酒造り」を掲げて

武田良則さんは、先代の頃の1999年から醸造責任者として、代替わりをしてからは社長兼醸造責任者として、思い描く酒の完成を求めて酒造りに取り組んできた。

それは、「まず、造り手の安定雇用」と社長が語るように、2006年から蔵人制度を廃止し、従業員による酒造りとした。本来は究極の分業体制で行われていた杜氏制度での酒造り。

最近は、なんでもやらなければ、というケースの方が多いかもしれないが、それでも蔵人は造りだけ、出荷、事務、営業と仕事は分かれていることがほとんど。

ところが、ここでは、原料処理からラベル貼り、配送、営業まで、分担しながら、全員一丸となって行っているという。

自らを、飲み手の笑顔のためという「同じ目的を持って取り組む」「プロに負けない集団」と、まるで素人集団かのようにも表す控えめさ。

しかし、春から秋まで事務など運営側の仕事に専念し、秋に蔵入りして酒造りを始める。

造っている自分たちが、お酒が生まれてくることに、それが美味しいことに、新鮮に感動してしまうのではないかとさえ思える。


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■上質なものを安定確保し質の向上に集中

越の白鳥

武田社長の後を継いで、2015年から醸造責任者就任者を任せられているのが、岩崎豊さん。武田社長とも酒造りや酒の開発を長く共に苦労してきただけに、武田社長の気持ちがよくわかる。

「造りたい酒の型ができたようです。そして、醸造責任者から手を離した。私たちはその品質をキープしつつ、さらに酒質を上げる努力を続けていくことですね」


岩崎さんが差しているのは、全体の酒造りの酒質であると同時に、『山間(ヤンマ)』の完成だ。今の同社にとって、この酒なしには語れないほどのインパクトを首都圏などの日本酒ファンに驚きを与えた。

五百万石を使いながら、すっきり綺麗な仕上がりと強い主張をもった味。 清酒学校にも通ったという岩崎さん自身、酒造りが面白くなってきたところのようで、酒造りを語る目がきらきら、ワクワクしている。その気持ちが伝わってくる。

原料の酒米には、五百万石を2004年から、越淡麗を2006年から、委託栽培にしている。

仕込み水には、新潟第一酒造といえば必ず出てくる「裏山の湧き水」。それまで使っていた敷地内の水が枯れたため探していたところ、裏山で湧いていたものを見つけたという伏流水。相当のことがない限り、枯れることはない。

しかも、この蔵の酒造りに合っているのだという。 「人も米も水も、確かなものがなくなる不安がない。そうすれば、安心して酒質向上に専念できます」 岩崎さんは、そう結んだ。

蔵元が勧めるお酒を紹介しよう。

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