北越の小京都で生まれた一見意味不明のアルファベットライン マスカガミに聞く誕生秘話
『F40』『J55』といった変わった名前の日本酒をご存知だろうか?
マスカガミの蔵は「北越の小京都」といわれ、歴史情緒あふれる加茂市にある。東に栗ヶ岳、西には弥彦山を望む風光明媚な地で、町の中心を加茂川が流れ、やがて信濃川に合流する。
そんな加茂川べりで1892年に創業し、現当主は5代目となる。
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■淡麗でありながら旨みのある風味
主要銘柄『萬寿鏡(ますかがみ)』の名は、万葉集などの和歌に由来。おめでたい文字を当てて命名されたという。
「長年、当り前のように使ってきましたが、初めて目にしたら何と読むかわからないですよね。マンジュキョウなんて言われたりします」
と中野壽夫蔵元は、創業者が恨めしいと笑った。 栗ヶ岳水系の上水道を仕込み水にする酒は、基本的には淡麗旨口。淡麗でありながら旨みのある飲み飽きしない風味を持つ。
■全製品の平均精米歩合は約55%
「手間がかかり、お金がかかる大吟醸クラスのお酒が美味しいのは当たり前。毎日の晩酌用の普通酒が評価される蔵でありたい」という考えで、酒造りをしていると中野さんはいう。 その現れが精米歩合。
「良質な酒を醸すには米を惜しげもなく磨くこと」を目標に、全製品の平均精米歩合はなんと約55%。「定番酒にこそ酒蔵の誠意が現れるもの」と、一番低価格な普通酒『清酒萬寿鏡』でさえ精米歩合60%となっている。
全国の平均が67.3%、酒どころ新潟県の平均が58.2%であることからも、いかに良酒造りを目指しているかがわかる。