名杜氏の薫陶を得て蔵元杜氏デビューの『宝山』 業種を超え仲間を巻き込み日本酒を楽しむ

酒米を一切使用せず、食用米として知られるコシヒカリを全量使っての酒造りも。

宝山

 江戸時代には、京都、江戸に次ぐ花街を抱えていた新潟市。その奥座敷として賑わった岩室温泉から、越後一宮である彌彦神社へと続く道の途中に、宝山酒造はある。

弥彦神社へ行く前、あるいは岩室温泉へ向かう前のワンクッションにちょうどいいと、ツアー会社に相談されて本格的に始めた蔵見学。今から25年ほど前のこと。

酒蔵に一般の人を入れるところはまだ少ない時代だった。それが今では、年間で16000人も訪れる人気だという。


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■名杜氏の後を継ぐ蔵元杜氏

宝山

宝山酒造の次期5代目となる渡邉桂太さんが、蔵に戻って3造り目の冬を迎えた。30年近く勤めていた前杜氏が引退し、今期からは桂太さんが杜氏となって、造りを任せられることとなった。

「これがあったから、杜氏としてやっていけるかな、と思えたんです」 と話すのは、一昨年から取り組んだ20代だけでお酒を造ろうというというプロジェクト。

言葉にはしなかったが、子供の頃からおじいちゃんのように親しみ尊敬し、名杜氏と言われた青柳杜氏。

そのもとで2年学び、薫陶を得たとはいえ、その後を継いで杜氏の任に就くということが、桂太さんにとって、決して簡単なことではなかった様子も伺えた。

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■『二才の醸』の成功をバネに

宝山

『二才の醸』(にさいのかもし)の銘柄に、聞き覚えのある人もいるだろう。2014年に、20代で社長を継いだ埼玉県・石井酒造の石井誠さんと杜氏の和久田健吾さんという20代コンビによって造られ、大きな話題を呼んだ。

それが一昨年、杜氏が20代を卒業するにあたり、酒蔵を超えて銘柄を譲渡。次期蔵元&杜氏の渡邉桂太さんと営業の若松秀徳さんという宝山酒造農大同級生コンビへと、引き継がれたのだった。

二人を中心に20代限定で、あらゆる立場の人たちを巻き込んで完成させたお酒は、2017年度のグッドデザイン賞というおまけまでついた。そして、同級生だけに二人一緒に階段を上る今年が最後の造りとなる。

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■日本酒に縁のない人も巻き込んで