離れたくても離れられない…現代の若者の依存の恋を描く『きみ棲み』
吉岡里帆主演『きみが心に棲みついた』。共依存の恋愛を描くドラマに注目が集まっている。
2018/01/30 16:30
吉岡里帆主演ドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)が今夜第3話の放送を迎える。
ここではこれまでの内容を振り返りつつ、見どころをチェックしていこう。
■これまでの『きみ棲み』
下着メーカーに勤務する小川今日子(吉岡)は、仕事熱心で評価されているが、学生時代には「キョドコ」と呼ばれていたほど挙動不審な女子。
もともとの性格に加え、大学時代に先輩の星名漣(向井理)に酷い扱いを受け、今でもトラウマを抱えている。
ある日、今日子はマンガ編集者の吉崎幸次郎(桐谷健太)に出会う。無愛想ながらも優しい性格に惹かれていくが、同時期に星名が今日子の会社に出向してきてしまう。
第2話では今日子と吉崎に仕事上で接点ができる一方で、星名の歓迎会で彼が飯田(石橋杏奈)と親しげに話し、テーブルの下で手を繋いでいるのを見て今日子がショックを受けてしまう様子が描かれた。
■第3話あらすじ
約束をすっぽかしただけではなくボロボロの状態で目の前から逃げ出した今日子を吉崎はメールで問い質すが、今日子は上手く答えることができない。なぜなら、過去の非道な仕打ちがあっても、どうしても星名と繋がっていたいと願う自分の気持ちに気付いてしまったのだ。
会社では相変わらず八木(鈴木紗理奈)とは衝突してばかりで、一緒に組んでいる新プロジェクトの企画が全く進まない。しかも、星名からは実際に企画が通るのは今日子のチームと堀田(瀬戸朝香)のチームのどちらか1つだけだと告げられてしまい不安が募っていく…。
そんな時、新作下着の発表会が開催された。取材で吉崎も担当作家のスズキ(ムロツヨシ)と共に会場を訪れている。今日子も忙しく動き回っていたが、星名に呼ばれ紙袋を手渡される。中に入っていた意外な物を見て戸惑う今日子に、「俺のために生きるって、言ったよな?」という星名の言葉が突き刺さる。星名はとんでもない試練を仕組んでいたのだ…。(公式サイトより)
■共依存の恋愛経験者はどう見る?
第2話では今日子の家庭環境や、星名に父親による虐待や整形などの過去があることが、はっきりとではないものの暗示的に描かれた。
そのような過去の辛い体験から、今日子は今のような自分に自信のない今日子に、星名は人を傷つけてそれでも相手が受け入れてくれることでしか愛情を測れない星名になったのだろう。
しかし、それだけでは実際にその手の経験をしたことがない人や、自己肯定感高く生きてきた人にとっては、本作のリアルさが少しわかりにくいかもしれない。
ということでしらべぇドラマ班では過去に交際していた女性と共依存の恋愛関係になったことがあるという男性に話を聞いた。
――本作を見てどこがリアルと思いましたか?
「今日子と星名はともにリアルというか、いかにもありそうだなと思いましたね。親に愛情を注いでもらえなかった結果、他者と健全な関係を築けない。「コミュ障になる」というのとはまた別の話であることも星名からわかるというか。
自分はもともとアダルトチルドレンではなく、交際した女性が機能不全家族の出身で、自分も女性との交際経験がなかったので健全ではない恋愛をしてることに気づかなかったんです。
最終的には流血沙汰になり、第三者の介入で離れることになりました」
――その女性はどんな家庭の出身なんですか?
「かなり閉ざされた田舎の出身で、徹底的な両親の監視下にあったようです。そして父親・母親ともにアダルトチルドレン的な傾向があったようで、進学先から習い事、洋服や日常の小さな決断に至るまで、彼女は両親の言いなりだった。
そういう呪縛から逃げるために上京してきたんですが、呪縛って肉体的なものだけじゃないんですよね」
――女性と交際している中で辛かった経験は?
「色々ありますが、共通しているのは相手に負担を強いること。すごく小さなことなんですが、僕との2ショットプリクラをSNSに強制的に投稿させるんです。束縛というのもあるし、恥ずかしいから嫌だと言うと『私のことを好きじゃないのか』と激高する。
自分に自信がないから相手に負担をかけたり傷つけたりして、それに応えてくれるかで愛情を測るんです。もう精神構造的にはまんま星名さんなんですが、自己肯定感が低いのはキョドコに近いかも。原作を読んでいないので断定はできませんが、たぶんキョドコと星名は遠いようで近い存在なんじゃないかなと思います」
■吉崎との約束をすっぽかしてしまう理由
――今日子は第2話ラストで吉崎との約束をすっぽかします。人間的に見れば吉崎のほうが絶対いいはずなのになぜ?
「自己肯定感の低い人、とくに女性は自分を冷たく扱う男性にいきがちな気がします。
『水は低きに流れる』ってことわざがありますよね。自然の成り行きは止めようとしても止められない、ってことの例えですけど、人間関係も同じな気がしてて。周囲から見れば辛いことでも、本人がそれに慣れていたらそっちに戻っちゃうものなんです。
だからキョドコは星名のことを嫌っているけど、一方で心の底から求めてしまう相手でもある。おまけに彼女の場合、母親に愛された経験が乏しく、そのせいで『どういうことが愛されるということなのか』がわかっていないのもあるでしょう」
下着メーカーを舞台に繰り広げられるなど、表面的には華やかな印象の『きみ棲み』。しかし、その根底には「愛すること・愛されること」の難しさがきっちり描かれている。
『逃げるは恥だが役に立つ』や『カルテット』で「ありがままでいること」「自分の穴(欠落)を受け入れること」が描かれてそれほど時間が経っていない中、同じ火曜22時枠でこんな作品が出て来るとは……。色んな意味で見逃せない作品である。
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(文/しらべぇドラマ班・Sirabee編集部 イラスト/ミキシマ)