人気商品の大幅刷新「大反対された商品売れる」の確信と抜擢
日本に「デザートドリンク」という新カテゴリを築き、大ブームとなった『ドロリッチ』の新旧開発者にインタビュー。
2017/05/17 06:30
■想像のつかないことをする人に
『ドロリッチ』は2007年10月「新感覚の飲むスイーツ」として発売され、先行販売の九州でブームとなって生産が追いつかず、関東地域の発売が延期されたほどの大ヒット商品として誕生。
その実力は、発売から2014年8月までの7年弱でシリーズ累計5億本を出荷したほどで、日本に「デザートドリンク」のカテゴリを確立した画期的な商品のひとつだ。
有馬さんがマーケティングに関して「市場はゼロ・サムではない」という信念を持ち、「デザートドリンク」という新たな領域に着眼した点をはじめ、あの独特の食感を可能にした「3段充填製法」や先の方が太いストローほか、さまざまな工夫によるところが大きい。
しかし、2009年のピークを越えてヒットに陰りが出ると、「迷走した時期もあった」と言い、自らが生み出した『ドロリッチ』を再び人気商品にするため、新たな人材に委ねることを模索する。
「年齢の近い、一緒にやってきた人に任せたけど、根本的な解決にならず、変わらなかった。生みの親の開発者がいると、どうしても最後は僕の意見に『ですよね』って、なってしまう。
そして、本当にまずいと思った時、自分がこの商品を作った時のことを思い出してみると、『大反対された商品は売れる』『それまでの経験値が邪魔をする』というのがあって…僕の知らない、想像のつかないことをする人に託そうと決断しました」
■ダメ出しの連続
そうしてバトンを渡された柳澤さんだが、「イヤだった」というマイナスのスタートから、どういう気持ちの変化があったのか?
「私は2007年の入社で、この『ドロリッチ』の営業を担当していたんです。売っていて、お客さんの反響も大きかったし、“こんな商品を作るなんて、すごい会社だ”と思うことは多く、商品にすごく助けてもらった――そういう思い入れはありました。
だから、商品について改めていろいろ聞いているうちに『私、この商品が好きなんだな』って、恋みたいに(笑)思ったんです」
とはいえ、商品開発は「好き」だけで乗り切れるほど簡単ではない。商品が完成するまでの1年半、市場調査や試食やパッケージの試作を繰り返すが、思い通りにいかないことやダメ出しの連続。
「“やっぱりゼリーとクリームのコクだ”という結論に至るまでに、さまざまなものを試したし、多くの試作を重ねて100本は試食しました。こだわり抜いたパッケージも、『なんかダサい』とダメ出しされ、それぞれの形に『何の意味があるの?』と詰められて、正直“辞めたい”と思うこともありました。(笑)
なんで上手くいかないかな? なんで“いい”って言ってくれないかな?――と、本当に辛くて…でも商品の開発にはたくさんの人の協力が必要で、こちらが一生懸命であればついてきてくれる人がいる。だから、『あきらめちゃいけない』って気持ちが、強かったです」