トラブル増加のマッサージ【後編】多すぎる民間資格も要因か
2016/12/24 06:30
厚生労働省も2016年3月に「あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師と無資格者との判別について」を発表し、治療の実施には国家資格が必要であることを啓蒙中だ。
治療に必要な国家資格について解説してもらった前編に続き、自らも国家資格を持って治療にあたっているK氏に、民間資格の何が問題なのかを聞いた。
■正確には無資格でしかない
「カイロプラクティック、オステオパシー、リフレクソロジー、足つぼマッサージ、リンパマッサージ、国際中医師免許ほか、さまざまな肩書きをつけていますが、前編でもお話したように『治療として』認められているのは、国家資格所有者だけです。
このような名称を店につけているほか、『○○セラピスト』を名乗っている人は全て民間資格であり、日本国内では厳密に言うと無資格者の扱いとなります。
よくマッサージ店で『治療ではありません』などの書面に、署名を求めるところがありますが、そうしたところは資格所有者のいないところと考えて間違いありません。
ただし、アメリカでカイロプラクターの大学を卒業し、アメリカの国家資格のD.C(ドクターオブカイロプラクティック)はWHOにも公認されていて、この資格を掲げて日本で開業されている人もいらっしゃいます。カイロプラティックを受けたい方は、この資格を持つ人を探すのがお勧めですね」
――民間資格の問題点は?
「国家資格を取るには最低3年間勉強しなければならないのに対して、民間資格は基準がないため、早いと1週間どころか2・3日、長くても2年で認定書が渡されて、卒業⇒開業できてしまいます。
普通はまず国家資格を考えると思いますが、3年間の通学が大きな壁となり、いろいろ調べていくと、たった数週間で免許がもらえる学校があることに気づく…。きちんとした技術と知識を身につけるためには、省いてはいけない期間なんですけどね。
ほとんどの患者さんは、国家資格と民間資格の違いがわからないため、○○整体スクール卒業という認定証を見ると、大体は安心してしまうんです」
■上手い・下手で判断するのは危険
――マッサージの上手い・下手で、判断してはいけない理由は?
「マッサージなど手による技術は経験に左右されるので、国家資格者でも経験が浅い人は下手だし、民間資格者でも経験が多い人は上手です。良い例えではありませんが、運転免許を持っていても、運転が下手で事故を起こす人もいる。一方、無免許で運転が上手い人が事故を起こさないからといって、公道を運転していいとはなりません。
さらに、知識なんかなくとも技術があれば良い…という考えを持っている人もいますが、これは大きな間違い。マッサージ等に来る人の中には医学的知識を必要とする患者さんもかなりいます。
『適当に揉んでおけばいいんだよ』『何でもかんでもボキボキ鳴らせばよい』という考えがあるから、事故が多くなる。この業界に携わるひとりとして、こうした事故が起きない環境になってもらいたいですね」
1年の疲れを癒す時期でもある年末の休み。プロの手を借りるのであれば、きちんとした資格を持つ人の治療を受けて、健やかに新年を迎えたい。
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(取材・文/しらべぇ編集部・くはたみほ)
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