なぜリクルートが精子測定アプリをつくったのか?開発者に直撃

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リクルートライフスタイルは、今年4月からスマホを使って精子の濃度と運動率を調べるサービス『Seem(シーム)』の提供を開始。その発表は大きな話題を呼んだ。

そこで、しらべぇ編集部は開発者である同社の入澤諒さんに、サービスにかける思いや反響などを独占取材した。


■なぜリクルートが「精子測定」を?

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入澤:一説によると、現在6〜7組に1組の夫婦が不妊に悩んでおり、それに対して主体的に動いているのは女性のほうだと言われています。

男性の場合、休みの日や仕事の合間をぬって病院に行き、その場で自ら精液を採取して…というのが高いハードルに感じられるのでしょう。

しかし、WHO(世界保健機関)の調査では、「不妊の48%は男性が原因」とされており、本来は一緒に治療や対策を始めるべき。男性が病院に行くきっかけを作ることで、こうした社会的課題を解決するため、今回Seemを開発しました。


■女性主体であることが「不妊治療の負担」に

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入澤:今、数十万人が行なっていると言われる不妊治療ですが、妊娠までの治療期間は平均1〜2年、治療費の総額は平均百数十万円かかっています。

女性が先行して治療を受けることの多い現状では、治療が高額になるだけでなく、女性の精神的・肉体的負担・が大きくなっている。

女性が1年ほど治療を続けても妊娠できず、男性が病院に行ってみると「じつは男性側が原因だった」とわかったケースもあると聞きました。この時にはすでに貴重な時間とお金が費やされており、女性も肉体的・精神的に辛い時間を過ごしているのです。

スマホアプリであれば、病院で検査するよりずっと気軽に簡易チェックができます。女性が治療に訪れた際、病院で買って男性に渡すこともできる。

この新事業を発表してから数多くのお問い合わせをいただきましたが、その多くが男性からだったのは意外でした。この技術なら、妊活・不妊治療のあり方や夫婦の悩みを大きく変えられるかもしれません。


■専用レンズと解析プログラムを開発

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画像は開発中のものです

入澤:弊社に転職する前、女性向け健康管理サービスや遺伝子検査サービスのディレクターをしていました。以前からヘルスケア分野に興味があり、弊社でも新サービスを作りたいと考えていたんです。

アイデアがまとまった後は、専用レンズと解析プログラムの開発に着手しました。iPhoneのカメラにセットできる直径1mm以下のレンズを開発し、さらに精子のサイズに合わせたごくごくわずかな隙間をつくって正しく観察できるようにするなど、プロトタイプをいくつもつくり検証しました。

精子の動きを解析するプログラムは、顕微鏡に比べ解像度が遥かに低いスマホカメラで、しかも自宅の照明の真下での明るさでも測定できるようにするため、こちらも調整と検証の連続でした。


■開発の過程でスタッフの「男性不妊」も判明 

入澤:私を含め、弊社社員も開発の過程で20名ほど測定してみました。そのうち4名は数値が悪かったのですが、中に1名、極端に低い男性がいて…じつは彼、その2ヶ月ほど前から妊活を始めたところでした。

奥さんも治療を始める前だったそうですが、すぐに病院に行ったところ、「精子はつくられているが体外に出ていない」ということが判明したそうです。

そこで、睾丸を切って精巣から直接精子を取り出すTESEという手術を行い、顕微授精に進むことができました。これまでなら、子供ができないことに数年悩み、奥さんが治療を始めて、ようやくその後に男性不妊を疑ったかもしれない。

彼も「早くわかってよかった! ありがとう!」と言ってくれ、こういうケースを増やしたいと考えています。


■精子の状態は体調などで変わる

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入澤:「男性も主体的に」というポイントはもうひとつあります。女性は妊活中、基礎体温を記録したり、排卵検査薬でチェックしたりする人も多いですが、男性はとくに何もしないですよね。

精子の状態は体調や環境によってかなり変化し、タバコや膝の上でのPC作業などは特に影響が大きいと言われています。私もこのサービスをリリースする直前は業務量が増え、数値が悪化していきました。

今後、女性の周期に合わせて男性も精子の状態をチェックしながら生活を改善する、という新しい妊活のスタイルが生まれるかもしれません。


このサービスは都内限定で500セットがテスト販売されているが、多くの問い合わせが寄せられていることもあり、全国発売 に向けて準備が進められている。また、現状ではiPhone版のみ。

ただし、このアプリはあくまで簡易的なセルフチェックであり、病院での検査の代わりになるものではないので、「妊活のきっかけにしてほしい」とのことだ。

(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト

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