神が遣わした「天使」はダッチワイフだった 格差が起こした珍事件
インドネシアで起きたまさかの騒動の顛末は…
2016/05/10 05:30
東南アジアの大国インドネシアは、珍ニュースの宝庫だ。
この国の人々は、オカルトを信じている。幽霊や超常現象が、実際にあると確信されているのだ。ジャカルタやスラバヤなどの都市部の富裕層は別だが、地方島嶼部の住人はオカルトとともに生活していると言ってもいい。
そんなインドネシアで、このような大騒動があった。
■天使が村にやって来た!
バンガイ諸島カルパピ村に、「天使」が落ちてきた。
このカルパピ村は漁村で、インドネシアの首都ジャカルタからははるか離れた海域に位置する。この国はあまりに広大な海洋国家であることを忘れてはいけない。
村人は「天使」が降臨したことを祝い、服を着せて椅子に座らせた。これは神からの贈り物に違いない、という。だが駆けつけた警官がそれを見てみると、「天使」は空気でふくらませるタイプのダッチワイフだということが判明した。
村人はそうした用途の人形を見たことがなく、故にそれが「神が遣わした天使」だと思い込んでしまったのだ。
■地域間格差がもたらす事件
この事件に対し、地元警察のヘル・プラムカルノ署長はこうコメントしている。
「カルパピ村にはインターネット設備がなく、村人はこのダッチワイフがどういうものなのか調べることができない」
プラムカルノ署長のこの言葉は、問題の核心を突いている。これは決して笑ってはいけない出来事なのだ。
インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、「地方間格差の是正」を公約に掲げて当選した人物である。ジョコ大統領はジャワ島の地方都市ソロのスラム街出身で、格差是正の必要性をよく知っている。
だが現状、都市部と地方島嶼部とでは別世界のような格差が存在する。それはインフラストラクチャーの格差であり、市民の知識格差でもある。
「インドネシアではスマートフォンが爆発的に普及した」というのはあくまでも都市部の話であり、貧しい島々ではそもそも回線整備がされていないのだ。
■大統領は公約するも……
ジョコ大統領が現在の役職に就いたばかりの頃、メディアの前でこう発言した。
「私はまず、ジャカルタの全市民に健康保険証を手渡します。そして近いうちに、この保険証をすべての国民に送り届けます」
インドネシアにも国民皆保険制度はあるが、それはあくまでも法律書の中の話である。実際は国民の大部分が公的保険に加入していない。
だから、貧困層の市民は病院になど行かない。では、どうするか? 黒魔術師を呼んで厄払いの祈祷をしてもらうのだ。
「格差が生むオカルト」が、経済成長へ向かうインドネシアを苦しめている。「天使騒動」もじつは面白おかしいニュースなどではなく、非常に深刻な社会現象なのだ。
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(文/しらべぇ編集部・Sirabee編集部)