「AV女優の出演強要被害」問題に川奈まり子が語った1万字の真実

現役AV女優からも反論の声が上がる「AV強制出演」問題。川奈まり子氏の1万字を超える提言をご覧ください。

2016/05/07 09:00

■業務委託であるゆえの課題も

AVのプロダクションは契約の形と運用実態が乖離しないように気をつける必要があります。業務委託契約をとっているAVプロダクションは所属女優の雇用主ではなく、指揮命令権を持っていません。

AV女優は所属事務所に対し帰属意識を持つ必要はなく、委託条件によっては仕事を断るべきです。

プロダクションと業務委託契約を交わしているAV女優は、健康保険や厚生年金、雇用保険などの保険料を自分で支払う必要があり、そこは雇用されていないデメリットですが、その分、誰からも何も命令されない自己決定権を有することにもなります。

業務委託契約をプロダクションと結ぶAV女優が被るデメリットは他にもあります。労働基準法を始めとする労働関係法令が適用されないため、有給休暇はなく、解雇は予告されず、健康診断は自ら受けねばならず、最低賃金も保証されません。つまり労働法で護られない。

業務委託を交わしているAV女優とフリーランスのそれとの違いは、実はあまり多くないということにお気づきですか? マネジメントを委託している所属事務所以外の窓口から仕事を受けないなどの決まりに縛られている以外は、多くの場合、似たようなものです。

AV女優の労働者としての権利を労働法によって護ることが困難な理由は個人事業主あるいはフリーランスなので、被雇用者ではなく、労働基準法を始めとする労働関係法令が適用されないから。

この問題を考えるとき私が思い浮かべるのは、実態が雇用契約であるにもかかわらず業務委託契約としている偽装契約。AVプロダクションとAV女優の関係において少なくなさそうな気がします。そう思う理由は、AV女優が所属事務所に帰属意識を強く持ち、主体性に欠けることが、まま見られるから。

プロダクションを介さず、AVメーカーがAV女優を募集することもあります。形式的にはメーカーの直雇いということになりますが、その場合も、AV女優は契約内容をしっかり把握しておく必要があります。私の予想では業務委託になる場合が多いでしょう。売れなくなれば一方的に解約されます。

しかしながら解約されたAV女優は別のところと再び業務委託契約を交わすかフリーになればよいわけです。

これが雇用契約だと人気が落ちても使い捨てられない代わりに、指揮に従わなければならなくなり、出演内容が性的なものである場合、雇用主被雇用者ともに非常に危なっかしい立場になってしまいます。


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■AV女優を労働法制で守ることは困難

ことほどさようにAV女優を労働者として労働基準法など、労働関係法令の適用のもとで保護することは難しいのです。雇用関係を取らせると、AV女優自身の自由裁量権が毀損されて、出演内容を自ら選び出演を諾否することができづらくなります。労働関係法令下で護るなら、たぶん性的表現の規制が必要になってくるでしょう。

前述しましたが、職業安定法第63条の第二条「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給を行つた者又はこれらに従事した者」にAVプロダクションが相当した判例が少なからずあります。

AV女優側からプロダクションを提訴した場合では、AV出演は公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務と判決されるのが常なのです。

だからプロダクションは雇用契約を避ける。すると労働法でAV女優が護られない――。 AVを規制したい人々の立場で「ではどうするか?」と考えてみると、出演内容における性表現や行為を規制して公衆衛生又は道徳上無害にするしかないことになります。

どこまでなら無害なのかを考えるとき、参考になりそうなのは先日の検証会にお越しになられたPAPSの方の個人的見解、「挿入を伴わず現行のピンク映画程度であればよい」というご意見ですが……各方面から異論が噴出しそうな気がします。

公衆にとって有害か無害かは人によって解釈が異なり、社会背景によって変化もしますから。

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■AV女優=被雇用者になると深刻な弊害も