気象予報士は「良い天気」と言っちゃダメ?業界用語も多数紹介【元井美貴のお天気ラリアット】
2015/05/27 11:00
こんにちは!天気を予報するのが生業、元気にプロレス観戦するのが生きがいの気象予報士・元井美貴です。
「明日の東京の天気は“101”でしょう」
そう聞いて、みなさんはどんな天気を想像されますか?「今年に入って101回目の夏日?」「101匹ワンちゃんみたいな白黒模様の天気?」さてさて、どんな天気なのでしょうか…。
正解は、「晴れ時々くもり」なんです。数字をすんなり天気に変換できた方…あなたは天気業界通! 天気系男子、ウェ女子(ウェザー女子)です!
天気予報にはテロップ番号があって、100は「晴れ」、200は「くもり」、300は「雨」、400は「雪」…というように、それぞれ対応する数値があるんです。質問の101は「晴れ時々くもり」、240は「くもり時々雨で雷を伴う」…などなど、全部で種類は120くらい。
私たち気象予報士は、よく使う番号をほぼ暗記していて、数字を目にするとついつい天気に脳内変換してしまうことも。ちなみに私は天気とプロレスというふたつの職業病を患っているため、「プレーンパスタ」を「ブレーンバスター」に空目してしまうくらいの重症患者でもあります。
おっと話が飛びましたが、今回のコラムは2000年から15年ほど気象業界に身を置く私が実際に使用している業界用語を紹介してみたいと思います。
■「温低」「熱低」「南岸低」
これは基本ですね。お察しの通り低気圧のことです。それぞれ「温帯低気圧」「熱帯低気圧」「日本の南岸を通る低気圧」を表していて、用例はこんな感じ。
例:予報士A「温低になりましたね!」
意味:「台風が温帯低気圧に変わりましたね」もしくは、「台風勤務お疲れ様です」「おはようございます」という挨拶代わりに使われることもしばしばあります。
■「晴れ一発」
1日中天気の崩れがなく晴天が続く予報の時に使う言葉。
例:予報士B「きょうは晴れ一発だから時系列は全部100でいいよね?」
意味:「きょうの予報は一日晴れだからピンポイント時系列予報は全てテロップ番号100の晴れマークでいいよね?」
この「晴れ一発」も基本的な用語で、たいていの気象予報士が使います。テレビで見かけるあの清楚系予報士さんも現場で力強く発していると思うと、なんだかほっこりしますよね? あれ、しませんか?
■「天相」
気象庁のお天気相談所を表します。
例:予報士C「ちょっと天相かけて確認して!」
意味:「ちょっとお天気相談所に電話で問い合わせてみて」
■「CM明けドン!」
壁ドンでもなく、新日本プロレス中西学選手の必殺技「上からドン」でもなく、最近引退を発表されたプロレスリングNOAH森嶋猛選手の愛称「ドン」でもありません。用例は…
例:フロアーディレクターさん「次CM明けドン!で来まーす!」
意味:「このCMが明けたら次は天気コーナーです。スタジオのアナウンサーさんを通さず直接天気コーナーに入るので油断しないでくださいね!」
私はこの「CM明けドン!」の場合、たいてい一瞬ビックリした顔をしてしまうのですが、大目に見ていただけると幸いです。
■「春の3K」
強風、花粉、黄砂のこと。
例:予報士D「きょうのネタは3Kでいきましょう!」
意味:「きょうの天気コーナーの話題は強風、花粉、黄砂を取り上げましょう」
他にも、良く晴れてこれ以上崩しようがない天気のことを「一円玉天気」と言ったり、天気コーナーのCG画面を多く用意しすぎてしまった時は「ターハイだったね」と反省したり(ターハイ…多牌って元は麻雀用語なんですね!?)、様々な用語が飛び交う気象業界。
そんな中で、なるべく天気予報では使わない方がいいとされているのが「良い天気」「悪い天気」という言葉なんです。ちょっと意外ですよね?
気象庁の予報用語でも「意味がいろいろに解釈され誤解をまねきやすいので用いない」と明記されています。確かに、遠足の予定がある方にとっての良い天気は晴れですが、傘業界の方にとっては雨の方が好ましいですもんね。
オンエアの時にはなるべくわかりやすい言葉遣いを心がけていますので、早起きをされた際にはぜひ見ていただけると嬉しいです。明日がみなさんにとって素敵な天気でありますように!
(文/気象予報士・元井美貴)