(8~6位)東京のうまいとんかつ屋ベスト10【マッキー牧元の世界味しらべぇ】
8位 御徒町「丸五」
秋葉原の人気とんかつ屋。細長い店内は、清潔感に満ちている。テーブルの上はソースに辛子、醤油、塩に、サービスのラッキョウと小梅の容器が整然と並んでいる。
「特ロースカツ」1700円(定食+400円)は、ロースカツより量も30gほど多く、肩ロース寄りの肉を使う。噛めば肉質がきめ細やかで、しっとりと肉汁が滲み、豚本来の旨味がある。中粗の衣は肉に密着し、サクサクとして香ばしく、油切れもいい。
そのままでも塩でも十分に美味しくいただけるとんかつである。どろりとしたソースは甘みが勝っているが、後味のキレはよく、ご飯を呼び込むには最適。
紫蘇の細切りが混ざったキャベツはみずみずしく、塩、レモンと醤油、添えられるドレッシング、ソース、いずれもおいしい。キャベツへのお奨めは、口のリフレッシュともなるレモン醤油。
ご飯、白菜、人参昆布の細切りの新香も十分に上等で、なめこと豆腐の赤だしは、香りよく、品があっておいしい。
他のおすすめは、「生野菜」。いわゆるサラダだが、キュウリ、トマト、セロリ、アスパラガス、人参、紫玉葱など、全てみずみずしく力あるサラダで、洋食屋で食べるサラダとしては最上級。500円もお値打ち。
また夜は、「肉寄せ」、「角煮」、「牛タン味噌焼き」、「豚ばら冷しゃぶ」、「豆腐サラダ」、「大和煮」等、「丸五」の底力を知る特有の肴もあり、そば前ならぬカツ前で一杯やってからカツを食べる楽しみもある。
7位 高田馬場「とん太」
高田馬場に働き、住む人は幸せだ。「成蔵」と「とん太」という、東京でも屈指のとんかつ屋が二軒もあるのだから。
この店のお客さんは、とんかつ好きが多いのだろう。昼でも千円の定食ではなく、一人で豪華に2100円の特ロースカツ定食を食べているサラリーマンも多い。
「特ロースカツ定食」2100円は、低温からじっくりと揚げられて、衣は中粗で淡い狐色。油切れも見事で、サクッとした食感も心地よい。肉の断面を見れば、しっとりと肉汁が滲み出て、中心部をロゼに残した仕事である。
なにもつけずにそのまま食べれば、衣が軽く、肉は優しい甘みに満ちていて、きめ細かい。後味も良く、上等なお菓子を食べているような感覚が湧き上がる。次に塩を漬ければ、甘味がいっそう際立つ。
自家製ウスターソースは、甘味が勝ちすぎず、酸味や旨味のバランスがよくキレがよく、カツの甘み、衣の旨味と出会い、また別のうま味が膨らむ味である。
胡麻と小さなすり鉢が用意され、多くのお客さんはここにソースを入れて漬けて食べる。それも悪くないが、ソースはソースだけで食べた方がよりおいしく、胡麻は塩と混ぜ、カツに振って一興とするのがいいだろう。
キャベツ、ご飯、特ロースカツは、しじみ、豚汁、わかめから選べる味噌汁も申し分なし。特ロースカツの新香は、キャベツと人参、大根、蕪、胡瓜で、浅漬けながらとてもおいしい。また白身魚のフライは、おいしい甘みをしっとり残したまま、さくりと揚がって、お奨めである。
6位 お茶の水「ぽんち軒」特ロースかつ定食
とんかつと名乗った元祖とされる今は無き「ぽんち軒」を名乗る辺り、とんかつ愛十分の店である。料理人は、恵比寿「かつ好」と、赤坂「フリッツ」出身の強力タッグ。
断面が肉汁で艶やかな「特ロースかつ定食」2120円は、肉がきめ細かく、豚肉の甘さが十分に味わえる。衣は粗目だが、ザクッという食感ではなく、ふわりと軽やかに揚げられている。ゆえに衣がアゴに刺さるようなことはない。中粗の衣も、このように揚げてくれれば、衣が主張しすぎることなく、肉を活かすのになあ。
別添えのキャベツは甘く、この店特有のウスターをかければ、何皿もおかわりしたくなる。輝くご飯、根菜の香りが溶け込んだ豚汁、共に上等。ロースは、甘辛さが際立つとんかつソースよりウスターの方が、豚の甘さを際立たせる。
また複雑味を持った塩も素晴らしい。新香はナムル風。
また大勢で訪れた際は、ぜひ「ヒレ一本揚げ」3200円を。豚肉の香りのよさに目を細めるはずである。かき氷もおすすめ。
(文/マッキー牧元)